従業員への「使えない」宣告はパワハラか?『ノンストップ』で議論

文=雪代すみれ
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「GettyImages」より

 7月17日に放送された『ノンストップ!』(フジテレビ系)の「NONSTOP!サミット」にて、「人望を失う言動」という特集が組まれた。その中で、人に対して「使える」「使えない」という言葉を使うことが議論になり、賛否両論が巻き起こった。

 まず番組では、<自分が仕事をこなすスピードが早いからって周りの人をすぐ使えないって言う人、、。人それぞれだし得意分野も人によって違うからまずいいとこ探そうよって思ってしまう。>という視聴者のツイートを紹介。

 このツイートをもとに出演者の間で議論が行われた。タレントの千秋は<自分が使えないって言われたらすごい嫌だと思うけど、使えないって言っている人は本当にそう心から思っていると思うから、この場合もその仕事が自分が早いからってことはそもそもその人ができる人ってわかってるんですよね。だったら使えないって言われないようにがんばればいいのになってちょっと思うんですけれど……だめなのかな>と意見。

 中央公論新社の取締役書籍編集局長である三木哲男氏は、上司のあるべき姿を諭した。

<実は会社の中で重要なことは、使えない人っていうのはどんなチームを作っても必ずいるんです。その人いてこそ持っていくのが本当のマネジメントだと思うのだけれども、だから使えないって言うのは(上司の方が)使えないですよ>

 また、三上真奈アナは<「使えない」って言葉はあまりよくなくないですか>と一言。バナナマンの設楽統も<完全なる悪口ですよね>と共感を示し、<その人がその仕事に入りたてとか、使えないの当たり前の人に対して「使えない」って言う人結構いるじゃないですか。仕事覚えたり、「これやってね」って言ってやるかどうか、ちゃんと仕事がある程度できる環境になって言わないと>と言及した。

 Twitterでは、「実際に使えない人はいる」「言われたくなかったら普通になって」など”使えない”と言いたくなる側の気持ちに共感する声がある一方、「”使えない”という言葉自体が物みたいで嫌だ」「どこがダメなのか教えてあげた方がいい」など意見が分かれていた。

「あいつは使えない」 聞いている周囲の人間の体調不良を引き起こすことも

 そもそも職場で人に対して「(あなたは)使えない」と言うことは、パワーハラスメント(以下、パワハラ)に該当する可能性があるのではないか。

 厚生労働省では職場におけるパワハラとは以下の3つ全てを満たすものと定義している。

①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
③労働者の就業環境が害される

※客観的に見て、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たらない

 また、パワハラに該当する例として6類型を示している。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 「使えない」と叱責したところで、言われた人物の仕事上の遂行能力は改善されないだろう。必要なのは「使えない」と言うことではなく、『ノンストップ』で三木哲男氏が指摘したように、“人を使う側”の人間がどのように指示をすればスムーズに業務が遂行できるか分析し、具体的な指導をしたり、その人にとって適正な配置をすることではないか。

 また、人事院の「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」には、<パワー・ハラスメントを受けている職員本人が、パワー・ハラスメントを受けていると感じていなくても、周囲の職員がその行為をみて不快に感じることによって職場環境を害することがあることにも留意が必要です>と書かれている。人に対して「使えない」と指摘することで、職場全体の環境を悪くする可能性があることにも注意したい。

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