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(※本稿の初出は『yomyom vol.63』(新潮社)です)
黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に「8分46秒」首を圧迫されて殺害されたのは5月25日だった。事件が起きたミネソタ州ミネアポリスで翌日から始まったブラック・ライブズ・マター(BLM)の抗議デモは瞬く間に全米50州のみならず、日本を含む世界各国に広がった。あれから1ヶ月近く経つ今もデモは連日続いている。
そんな折も折、6月半ばにジョージア州アトランタにて黒人男性レイシャード・ブルックス氏が警官に背後から撃たれて死亡する事件が起き、ブラック・ライブズ・マター運動と、現地の警察・市行政に再び大きな衝撃が広がった。警官は事件後5日目に殺人罪などで起訴された。過去の警察暴力事件ではあり得なかったスピード起訴だ。
こうした出来事と同時並行で、全米にあるコロンブス、および奴隷制度に関わった偉人の銅像が次々と破壊、または撤去されている。ハリウッドの古典映画『風と共に去りぬ』は奴隷制賞賛の描写があるとして大手配信サービスのストリーミングから外された。毎年6月19日は奴隷制終焉を祝う「奴隷解放記念日」だが、これまでは黒人以外にその由来がほとんど知られていなかったにもかかわらず、各企業が急遽、祝日休業とした。さらにこの日を連邦の祝日とするべく、法案が提出された。
警官によるフロイド氏殺害事件が黒人への警察暴力批判だけでなく、なぜ過去の奴隷制にまで波及したのか?