BTSはなぜ日本語でも歌うのか? K-POPアイドルが「日本語バージョン」を出す理由

文=DJ泡沫
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多様化する「現地化」と海外活動のスタイル

 日本国内ではとかく「日本でだけ」という口調で語られがちだが、「K-POPの現地語バージョン」は実際は日本語だけではない。一時期K-POPの中国進出が活発だった時期は中国語バージョンも数多くリリースされたが、政治的な理由で韓国のアーティストは中国内で本格的な活動できなくなったために、現在は止まっているだけではないかと思われる(2016年に韓国が高高度防衛ミサイルを配備した報復措置として、中国では韓国の芸能人の活動が制限されていると思われる)。

 BTSも過去中国にFCを作った時期には中国語バージョンをリリースしており、中国語圏で披露していた。「CT理論」の産みの親であるSMは現在でも英語・日本語・中国語の区別なく活動国での現地語バージョンをリリースしており、当初は韓中でパラレル的に二つのグループを活動させる予定だったEXOは中国語バージョンのアルバムを同時にリリースしていたし、SUPER JUNIORの中でも個人でタイのCMに出演するくらい人気のあるメンバーのキュヒョンは、ソロ曲のタイ語バージョンリリースしている。

 BTSの例でよく挙げられる「英語バージョン」に関しても、SM所属のNCT(NCTはCT理論の進化版とも言えるネオ・カルチャー・テクノロジー理論を体現するべく作られた)だけでなく欧米圏で人気を拡大しつつあるJYP所属のGOT7やStray Kids、アメリカのリパブリック・レコードと契約した(G)I-DLEなど現在では珍しくない。中でもMONSTA Xは昨年欧米活動の本格化にあたって、アメリカのレコード会社から全曲英語のオリジナルアルバムをリリースした。

 このように、現地語バージョンは決して「日本でだけ」の手法ではないが、日本が韓国のアーティストにとって概ね活動を継続しやすい環境であるという部分は大きいのかもしれない。近年ではThe BOYZのように「日本オリジナルアルバムだけど収録曲はほぼ韓国語か英語(少し日本語)」というパターンや、先に日本語でリリースした曲を後から韓国語バージョンでリリースしたりと様々なパターンがある。

 つまり、多様化する活動スタイルの中からどのようなやり方を選ぶかはK-POPアーティスト(事務所)側に選択肢があるという事でもあるだろう。韓国では一部のファン(かどうかはわからないが…)が「日本語で歌うな」という抗議行動をしたりするケースが、特に特定のグループが人気が出た後に見られたりもするし、「韓国のアーティストが日本で日本語でパフォーマンスする」という事に反射的に「強制性」を感じてしまう層もいるのかもしれない。

 しかし、そのような目線自体が逆にK-POP=韓国の事務所・アーティストに主体性がないかのような一種のバイアスとも言えるだろう。

 SMの提唱した「CT理論」は3段階あったが、JYPが中国でBOYSTORYを結成したり日本でNizi Projectを経てNiziUを作ったやり方は、まさに第3段階の「現地企業と合弁会社を立ち上げ、韓国のCT(文化技術)を伝授する」である。CT理論の究極段階は、このように「どこの国で、どの言語で、何人がパフォーマンスしてもK-POP」というスタイルを確立する事にあるという事になる。

 「ロック」や「ヒップホップ」のような存在になる事を目指しているのであれば、「日本では日本語の曲をリリースして日本語でパフォーマンスする」というのは、K-POPの壮大な野望のほんの一過程にすぎないのかもしれない。

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