月7度も黒人に職務質問する日本に「黒人差別」はないのか?

文=東江亜季子
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黒人の傷をえぐる日本の警察

 昨年9月のある日の朝、英会話の仕事に行ったと思った夫がすぐに引き返してきて、トイレに引きこもった。パニックを起こし、過呼吸になって仕事を休んだと知ったのは数日後のこと。

 仕事に行く途中、警察に止められたのが原因だった。

 「車をチェックする」と足止めを食らった。警察に止められ仕事に遅れたのは3度目。 のちに数えるとその月、夫は1カ月に7回、警察に止められていた。積み重なる上でのショックは大きかった。

 夜出歩いていれば、3回に1回の確率で警察に「所持品確認」の名目や「なぜYナンバーの車(米軍関係者の自家用車)じゃないのか」と言われ、止められる。

 一度は「どこか建物に連れて行かれた後、数時間経って『間違えた』と言われた。それで帰された」と泣いて帰宅した。帰ってきたのは翌日の夜だった。取り囲んだ人々は日本語で一方的に話してきたため、「英語を話す人を出してほしい」とせがったそうだ。海外で同じ状況に自分が遭遇したらと思うと身震いする。

 普段、穏便な夫は、警察に止められた日は悲しさを滲ませる。それが最近は怒りに変わっている。「アメリカにいる時に手を後ろに組まされ、所持品を確認された経験を思い出す」。アメリカに住んでいた頃、警察にされたことがトラウマのように襲ってくるのだ。

 警察が黒人を止める。夫が経験しているその異常な回数は、警察権力による人権侵害であると私は考えている。

 その横暴が下支えする根底に、夫は「黒人に対する偏見と差別がある」と断言する。

「だから許してはいけないんだ。あのNHKの動画を。あれこそが日本における黒人の扱い全てを反映している。黒人のイメージを邪悪に描き、拡げ、権力による干渉を許す素地を広げた」

 夫が指摘するのは、ジョージ・フロイドさんの事件を機に広がったアメリカの抗議行動を“誤解を生む形で”拡げたNHKの番組「これでわかった!世界のいま」の動画だ。現在は削除されているが、公式Twitterに掲載されていた。

NHKがアメリカ抗議デモの問題点を「経済格差」に矮小化、動画削除し謝罪

 アメリカ全土で行われている抗議デモに関して、NHK総合の国際情報番組『これでわかった! 世界のいま』6月7日放送での杜撰な解説が、批判を浴びている。…

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月7度も黒人に職務質問する日本に「黒人差別」はないのか?の画像2 ウェジー 2020.06.09

黒人系“ハーフ”に向けられる差別

 私が沖縄の地方紙「琉球新報」の記者をしていた頃、沖縄の米軍基地で勤務したアメリカ人と、沖縄の女性の間に生まれた人々を取材したシリーズ「私のポジション 沖縄×アメリカルーツを生きる」を新聞に掲載した。連載は後に書籍化したので、ぜひBLMのうねりがある今のタイミングでみてほしい。

 いわゆる「黒人」と呼ばれるアフリカン・アメリカンのルーツの3人を取材したが、全員に容姿の特徴を攻撃された経験があった。その人が20代であろうと、30代であろうと、50代であろうとだ。

 現在55歳になる女性は、幼稚園の頃初めて「クロンボー」と言われ、小学校に上がると「お前が給食当番をしたら食べ物が黒くなるから、入れるな」と言われた。

 29歳になる女性は、20年前、放課後の時間、地元に戻って公園で遊ぶ時に、肌の色や髪の毛のことを「汚い」といじめられた。当時の理奈さんは、家に帰って母親に「なんで私を生んだの?」と泣いて迫ったという。

 親富祖愛さん(36)が思春期の頃、メディアでは「ハーフ」と呼称される海外にルーツがあるタレントがもてはやされ始めた。しかし、それは人種を特定したもので、今でも「ハーフ顔メイク」として雑誌やWEBメディアが特集する、「白人系の人種のハーフ」である。この傾向は少なくなってきたが、今も変わっていない。

 もし、この記事を読む人が日本に住んでいるなら、メディアで起用されるモデル、広告に起用される英会話講師などの人種のバランスをよく観察してほしい。人種のバランスを考慮すること、ヒーローなのか悪役なのか与える役を考え直すこと、これらは今、欧米を中心とした諸外国で変化しようと努力が続けられていることだ。

 日本はどうだろうか?

 母が交際している相手を「黒人か、白人か」最初に問うた裏にあるように、私たちの社会は「白人でありたい願望」「白人至上主義」を変えきれていない。

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