株主優待に積極的な企業には要注意! 株式投資という契約の本質

文=加谷珪一
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GettyImagesより

 コロナ危機で将来への不安が高まっていることから、株式投資に関心を持つ人が増えている。ネット証券の新規口座開設数はコロナ危機にもかかわらず大幅に伸びているという。

 株式投資は基本的に株価の上昇を狙うものだが、長期的には配当などのインカムゲインも大きな収益源となる。日本の場合、配当に加えて株主優待を狙って投資をする人が多いという特徴が見られるが、過度に優待に期待する投資は実は極めてリスクが高い。本気で資産形成を望むのであれば、優待の有無はひとまず横に置いた方がよいだろう。

優待というのは自分の店の商品を消費すること

 筆者はこれまで20年以上にわたってコツコツと株式投資を続け、現在の資産額は数億円規模になっている。投資について特別な才能を持たなかった筆者がそれなりに成功できた理由は、時間を味方に付け、途中で投資をやめなかったことと、投資の基本セオリーから外れることは絶対にやらなかったことの2つが大きい。

 投資の基本セオリーには様々なものがあるが、意外に知られていないセオリーのひとつに「株主優待に積極的な企業には要注意」というものがある。

 筆者自身、現時点でも株主優待を行っている企業の株式を保有しており、年間10〜20万円分くらいは飲食や商品などをタダで楽しんでいる。だが、優待を行っている企業の株式はあくまで純粋な投資目的で保有を決定し、結果として優待も楽しめているだけであり、優待を目的に投資を行ったことは1回もない。

 投資家の中には優待を目的に投資をしている人もいるし、マネー誌などでもこうした投資を推奨する記事がたくさん掲載されているので、一部の読者の方は優待について否定的に書くと気分を害するかもしれないが、そのような方は本記事を読んでいただく必要はまったくない。投資スタイルはそれぞれであり、どのような投資を行うのかは、まさに個人の自由である。あくまで筆者は、「投資を楽しむ」ことではなく「投資で利益を上げること」を前提にした場合、株主優待への過度な期待はリスクが高いことを説明したいだけである。

 では、株主優待に過度に期待するのは何がいけないのだろうか。その理由は、株主優待が持つ本質的な意味にある。

 株主優待という難しい言葉を使うと焦点がぼやけてしまうので、もっと身近な例でシンプルに説明した方が分かりやすいだろう。株主優待というのは、菓子店を例に取れば、菓子店の主人がタダでその店のケーキを食べることに相当する。

 このような形で説明すれば一部の読者の方はピンと来るのではないだろうか。商店を経営している人や、商店主の家庭に育った人であれば、耳にタコができるくらい聞かされたかもしれないが、自分で所有しているお店の商品を自分で消費することは基本的に御法度である。

 株主というのは会社のオーナーなので、まさにお店の所有者であり、その所有者が自社の商品をタダで消費するのは、商売の道理として基本的にやってはいけないことなのだ。

企業が使うお金は株主が提供したもの

 では、なぜお店のオーナーは商品をタダで消費してはいけないのだろうか。その理由は、商品というのは、顧客に販売して利益を上げるための大切な道具であり、その商品を自分で消費した時点で機会損失が発生するからである。

 菓子店で500円で売られているケーキは、300〜400円程度の金額で原材料を仕入れ、ケーキを作るという付加価値を加えて顧客に販売される。仮に原材料費が400円だった場合、1個を売って得られる粗利益は100円となり、そこから人件費や光熱費などを支出しなければならない。

 もしこのケーキをタダで食べてしまえば、100円の粗利益を失うだけでなく、原材料の仕入れに使った400円も損失になる。タダで食べているように見えても実は大きな損を出しており、自己消費をした分だけ、企業の利益は確実に減少している。そうであればこそ、商品を自己消費する行為は商人道として固く戒められているのだ。

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