
GettyImagesより
7月末、全米最大の小売チェーン、ウォルマートのミネソタ州にある店舗に中年の男女カップルが、ハーケンクロイツが描かれたマスクで入店した。他の客に咎められると、女性が「(11月の大統領選で)バイデンに投票したらナチ・ドイツになる。そんなふうになるんだ!」と返答。店舗側は警察を呼んだが、カップルは逮捕されることなく店舗を出た。
後日、ウォルマートはこのカップルを「少なくとも1年間、全米のウォルマートに入店禁止」とした。
進むマスク着用義務化
アメリカはコロナの爆心地と呼ばれたニューヨーク市、およびニューヨーク州の感染者数が劇的に減ったのと入れ違いに他州での感染が急増し、今や全米の感染者数430万人超、死者15万人(2020/7/29付)の危機的状況となっている。どんどん増える数値が日々報道され、収束案が盛んに議論されている。とはいえ、経済の再開を遅らせる余裕はもはやなく、コロナ予防策を行ないながら以前の日常生活に徐々に戻すという綱渡り状態だ。
一般市民が行う最も基本的な予防策「マスク・手洗い・6フィート(1.8m)」はコロナ禍当初から繰り返し推奨されているが、「マスク」が非常に厄介な、他国では到底理解されないであろう大問題となっている。
今や全米50州のうち約40州で公共の場でのマスク着用が義務化されている。多くの州が「他者との距離が取れない場合」としているが、子供のマスク着用年齢など詳細は州により異なる。そんな中、知事がマスク義務化を頑なに拒否している州もある。
州による法令とは別に、大規模な全米チェーン店は独自にマスク着用を義務化し始めている。全米5,000店以上を展開する小売最大手のウォルマートを筆頭に多くのチェーン店が7月20日辺りから義務化を開始した。マクドナルドなど8月1日から開始するチェーンもある。感染者数が爆発的に増える中、義務化がこれほど遅れたのはマスク着用を拒否する客への対応に苦慮したことも理由の一つと思える。
早い段階で義務化した店では、店員にマスクを着けるよう注意され、逆上して怒鳴ったり、商品を投げ付けたりする客が続出したのだ。さらにはマスク着用を巡る殺人、警官による射殺も起きている。ウォルマートではこうした客から店員への暴力行為を避けるため、義務化はしても拒否する客に強要はしないとしている。そのウォルマートで義務化早々に起こったのが先のハーケンクロイツ事件である。
さらには「義務化するなら、これでどうだ!」と、メッシュのマスクを着ける者まで出ている。 もちろん、効果ゼロと知った上での茶化しだ。
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