たかがマスク、されどマスク〜拒否派 vs. デザイン自己主張派

文=堂本かおる
【この記事のキーワード】

マスクを拒否する理由

●トランプ支持

 一部のアメリカ人が強硬にマスクを拒否するには、いくつかの異なる理由がある。まず、政治的な理由だ。コロナ禍初期にトランプがコロナの存在自体を否定、感染者数が増えた後もマスク着用を勧めず、自身も着用を拒否した。これに倣うトランプ支持者が続出し、マスク拒否はトランプ支持の表明となった。

 トランプ自身は感染の急激な拡大についに折れ、先日、公共の場でマスクを着けたが、時すでに遅しの感がある。トランプ支持者は「コロナはフェイク」「大したこと無い」「風邪のようなもの」を信じ込み、今さらマスクを着けようとはしない。

 ただし、これについてはトランプのみならず、初期には科学者もマスクの効用を疑問視したことがマスクについての知識を混乱させたものと思われる。また、医療現場用のN95が不足し、一般人はN95を付けないようにという行政からの通達もあった。もっとも、問題はいったん信じた誤った知識を新しい情報によって上書きしない、頑なな層の存在である。

 もちろんトランプ支持者にもごく当たり前の科学を理解する人々、感染を恐れる人々はおり、彼らはマスクを着けている。そうした層に向け、「トランプ2020」などと書かれた大統領選キャンペーン・マスクも売られている。

 世論調査によると、民主党支持者で「マスクを常に、もしくはほとんど常に着ける」は76%だが、共和党支持者では53%となっている。(Pew Research Center)

●自由と権利

「私には自分の健康管理法を自分で決める自由と権利がある」

 マスク拒否派が頻繁に主張するセリフだ。アメリカには何事も決定権は個人にあり、政府や行政にはないとする考えがあり、マスクに限らず、「お上」からの一方的な通告に強い反発が起こる。

 ただし、マスクについては自身の感染防止ではなく、他者への飛沫拡散防止であり、ひいては地域全体の感染数を抑えるという「複雑」な科学的事実を理解していないのである。

 なお、マスクを着けない理由として虚偽の基礎疾患や病状を持ち出すケースがある。カリフォルニア州サンディエゴのスターバックスでは、マスク着用を告げられた女性客がバリスタの写真を撮影し、フェイスブックに脅しのコメント「私がマスクを着けていないからコーヒーの提供を拒んだスターバックスのレニン。次回はマスク免除の診断書を持って、警官を待つ」と共にアップした。病状や体質によってマスクを着けられない人が実際にいることから、店舗側が苦慮する件である。

 この件はバリスタに同情した人物がクラウドファンディングにて「チップ」を募り、なんと10万ドル(1,000万円強)が集まった。するとマスクを拒否した女性客が半額を要求するという事態となっている。

●根拠なき楽観

 「私の生活環境では感染しない」と考え、マスクは不要とする人々がいる。「会うのは親しい人だけだから」「それほど混んだ場所ではないから」などが、その「生活環境」だ。残念ながら、どちらも感染の確率がゼロになるわけではない。

 さらには「若いから感染しないし、しても重症化しない」と思い込む若者が少なからずいる。先日、テキサス州で「コロナ・パーティ」に参加した30歳の男性が死亡した。参加者のうち誰が最も先に感染するかを競うもので、時には報奨金が積まれる。

 死亡した男性はICUの病床で 「オレは間違いを犯したと思う」と言い残したと報じられている。

●自己主張

 アメリカ人にとって顔と表情は自己主張の大切なツールだ。その半分をマスクで覆うことに抵抗を感じる人は多い。仮にリストバンドなど顔以外に着ける感染予防アイテムがあったとすれば、対マスクほどの反発や忌避は起こらなかったのではないかと思える。

 先のスターバックスのバリスタはインタビューにて「客の8割はマスク着用、1割はうっかり着用忘れ、1割が拒否」と語っている。世論調査の結果もバリスタの見解と似ており、店舗内などで「常に着用」65%、「時々着用」15%、「滅多に着けない」9%、「決して着けない」7%となっている。(Pew Research Center)

 ちなみにトランプに倣ってマスク非着用だったホワイトハウス職員からはすでに数人の感染者が出ている。つい先日はアーカンソー州のジェイソン・ラパート上院議員(共和党)が感染し、入院中だ。「コロナはデマだ」と言い、同州知事によるマスク義務化に反対した議員である。

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