コロナの経済打撃にGoToキャンペーンは効かない 自民党若手議員の提案する「本当に必要な政策」は

文=宮西瀬名
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GettyImagesより

 新型コロナウィルスの影響により大打撃を受けた観光業界をサポートするためのキャンペーン「GoToトラベル」が7月22日よりスタートし、この夏を満喫すべく旅行に出かける観光客は少なくない。一方で同キャンペーンに対する不信感も根強く、朝日新聞社が行ったアンケート調査によると、「反対」(74%)が7割以上だ。

 全国的にコロナの感染拡大は深刻化しており、GoToキャンペーンを実施した政府の失策を問う声もいっそう大きくなりつつある。コロナ禍で大きく落ち込んだ経済を回復させる術は、他にないのだろうか。

 自民党議員の安藤裕氏が会長を務める議員連盟・日本の未来を考える勉強会は3月、粗利補償や消費税ゼロなど多くの経済学者が支持する政策を提言した。しかしそれから数カ月経った現在でも、これらの政策に関する議論に進展はあまり見られない。

 安藤議員がコロナ禍において講じるべきとする経済政策について話を伺った。

安藤裕
昭和40年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。衆議院文部科学委員会理事、法務委員会委員、自由民主党内閣第二部会・部会長代理、自由民主党憲法改正推進本部幹事、内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官を歴任。現在、衆議院内閣委員会・文部科学委員会各委員、自由民主党総務部会・部会長代理、組織運動本部労働関係団体委員長、議員連盟「日本の未来を考える勉強会」会長等を務める。税理士。行政書士。

「消費税ゼロ」の恩恵は事業者と消費者どちらにももたらされる

 安藤氏ら自民党の若手議員の目にも、「GoToトラベル」は時期尚早に映っているという。

安藤議員「このキャンペーンは新型コロナウィルスの抑え込みが成功した時期であれば有効だったと思います。ですが今は、新型コロナウイルスの蔓延がおさまらない、むしろ増加している局面であり、国民の不安感が払拭されていない状況ですので、『時期が早すぎた』と言わざるを得ません」

 なぜ「GoToトラベル」や「アベノマスク」など、首を傾げたくなる政策ばかりが施行されるのか。

安藤議員「これらの政策が議論・決定されたタイミングでは、その必要性はあったものと思います。新型コロナウィルスの影響により、観光業界が大打撃を受けたことは自明であり、旅行者の増加を狙ったこの政策は決して的外れではありません。

 しかし、政策を決定した時期と現在とでは、状況が違います。『経済を動かすとウイルスの拡大を防げなくなる』というのは誰が考えても分かることで、このキャンペーンは経済対策・感染予防のどちらも満たせない中途半端な結果になると思います。

 『アベノマスク』にしても、マスクが不足していた3~4月にすぐに配布できていれば有効な政策だったと思います。しかしマスクが市場に出回り、マスク不足が解消された時期に配布されたため、多くの批判の声が起きました。

 どちらも決して荒唐無稽ではなく効果の見込める政策なのですが、実行のタイミングが著しくズレてしまったため、国民の皆さんを困惑させる結果になってしまいました」

 決定から実行に至るまで時間がかかりすぎていること、そしていざ実施するというタイミングでの社会情勢に合わせた柔軟な変更ができないことが、問題の根幹にあると言える。

 経済を再生させるために必要なこととして安藤氏が以前から訴えているのは、GoToキャンペーンではなく、「粗利補償」と「消費税ゼロ」だ。

 「粗利補償」とは、自粛要請のあった地域・業種に限らず、日本全国・全業種の企業の粗利を補償するという案だ。“粗利”とは、売上高から仕入原価を差し引いた差額を指し、事業者はこの中から人件費・家賃・水道光熱費・利息などを支払い、法人税などを納税し、残りの利益から借入金の返済を行う。

安藤議員「つまり、これらを補償すれば、誰一人従業員を解雇することなく、様々な支払いを滞らせることもなくなります。さらに、今まで通りの支払いを続けられるため、事業者は安心して休業要請を受け入れることができ、感染拡大を抑制することが可能になるのです」

 また、「GoToトラベル」は観光業界を中心とした事業者、あるいはそれを利用する消費者しか恩恵を受けられないが、消費税を減税すれば日本全国のありとあらゆる事業者、それから全ての消費者に恩恵が行き渡る。

安藤議員「消費減税は景気対策としても極めて有効な政策と言えます。消費税ってそもそもどういうものだと思いますか?」

 教科書的には、『本来あるべき売り上げの売値に10%の消費税分を乗せて販売し、その消費税分(10%)を消費者から預かり、それを税務署に納税するから、事業者の損益に影響はない』と説明される。しかし「『消費税(10%)を売値に乗せる』ことが完璧にできている事業者は少ないのが現状です」と安藤氏は言う。

安藤議員「実際は“事業者は自分の利益を削って”消費税を納税しているのです。つまり、5%から10%に税率が引き上げられたことにより、中小事業者の利益は確実に小さくなっています。

 消費税減税を行えば、消費税納税によって失われていた利益を事業者に戻すことができ、中小企業の経営の後押しにもなります。消費税減税は消費喚起策だけでなく、中小企業の経営を支援するという面でも有効で、二重の効果が期待できるのです」

 だが安藤氏ら自民党若手議員の提言には、「財源はどうするのか」という疑問の声もある。これに対する安藤氏の答えは「財源は国債で全く問題ない」だ。

安藤議員「『国債を発行する』と言うと反対する人は多く、なかなか政府も動きません。しかし、財源は国債しかありえません。百年債や二百年債といった超長期国債を発行し、新型コロナウィルスが落ち着いて経済を立て直してから返済すれば良いのです。

 こう言うと『次の世代にツケを回すのか!』という批判もされますが、ここで大胆な経済支援をしないと企業がどんどん潰れていき、日本国内の様々な物やサービスを生産する力が失われます。去年の日本の名目GDPは550兆円ぐらいありましたが、コロナ不況で近い将来に日本が500兆円どころか400兆円、300兆円しか生産能力のない発展途上国に転落してしまう可能性は十二分に考えられます。ここで手を打たなければ生産力の低い発展途上国としての日本を将来の子供たちに残すことになり、それの方がよほど“ツケを回している”わけです」

「休業要請と粗利補償をセットに」自民党内でも徐々に浸透

 提言を発表してから数カ月が経った。進捗状況はどうか。

安藤議員「『粗利補償』は『持続化給付金』といった形で実現し、二次補正予算案では『家賃支援給付金』が新たに創設されました。また、雇用調整助成金も当初は8330円が上限とされていましたが、今では15000円まで引き上げられました。これらは我々の提言が実現したものと自負しています。ただ、『全ての経費を補償する』というのが粗利補償の本来の趣旨ですから、『まだまだ不十分である』と言わざるを得ません。

 とはいえ、菅義偉官房長官は先日、休業要請に応じた事業者への補償に前向きな姿勢を見せており、新型コロナウィルス特別措置法の改正についても言及しています。我々がかねてから訴えてきた『休業要請と粗利補償をセットに』ということが、徐々にではありますが、自民党内でも広がりを見せているように感じます。

 実際、50兆円以上の第一次補正予算を提言した際は否定的な反応を多かったのですが、100兆円以上の第二次補正予算を提言した際には、『ありかもしれない』と国債発行に対する抵抗感が確実に薄くなっています。これは草の根運動をして国債発行の必要性を訴え続けてくれた私の支援者の方々の功績です。

 また、消費税減税の理解も広まりつつあり、安倍晋三首相は先日、経済産業省出身の官邸官僚を主導とし、消費税減税の検討を開始しました。財務省は消費税減税に反対しますから、経済産業省に主導させることはとても効果があります」

 「消費税減税」を実現するには、反対派をいかに説得するかが重要であり、いまだその段階には至っていないという。だが内閣府が「2018年10月から景気後退した」と認識を改めたことで、「消費税減税」のハードルが多少下がったと見ることもできる。

安藤議員「長いこと内閣府は『景気は緩やかに回復している』と言い続けてきましたが、2018年10月がピークであることはデータを見れば明らかでした。にもかかわらず、消費税増税を昨年10月にスタートさせ、その結果、昨年の10~12月期のGDPは恐ろしいほどの下落を見せました。景気後退している状況で、消費税増税をすれば当然ですよね。そのうえ、コロナ禍による今後の経済低迷は計り知れません。裏を返せば、国民や企業の負担を和らげる消費税減税の必要性は訴えやすくなったと言うことができます」

 日本は民主主義の国であり、政治を動かすのは国民だ。政治家は国民に選ばれた代表にすぎない。私たちが要望を直接“代表”に伝えることが重要で、安藤氏は「SNSを通じてやメールでもいいので是非、ご意見を伝えて欲しい」という。政府は思いの外、SNSの声などを気にしている。

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