「女子大生フレッシュヌード」とは何だったのか 女子学生を「女子大生」という商品に仕立てたメディアの罪

文=小林哲夫
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GettyImagesより

 「女子大生」という言葉は特別な響きを持って受け止められる。これまでメディアが「女子大生」という存在に与えてきた様々な付加価値があるからだ。

 教育ジャーナリストの小林哲夫さんは、新刊『女子学生はどう闘ってきたのか』(サイゾー)で、あえて「女子学生」と表記している。なぜか。「女子大生」には、“いわば商品性がつきまとってしまう”からだ。

 「女子大生」の商品化とは何か。それはどのように行われてきたのか。『女子学生はどう闘ってきたのか』から、二回にわたって紹介する。

 週刊誌グラビアを飾る「女子学生ヌード」が登場したのは、1960年代後半。これをもっとも得意としたのは、当時の若者雑誌『プレイボーイ』(集英社)『平凡パンチ』(平凡出版 現、マガジンハウス)だった。

男性誌の中の女子学生

 1970年代、『an・an』(平凡出版)『non-no』(集英社)『JJ』(光文社)などでは旅行やおしゃれで女子学生がグラビアに賑わすようになったが、一般週刊誌、男性週刊誌にも女子学生が次々と登場するようになった。それもヌード、水着姿の「お披露目」である。

 『週刊サンケイ』(扶桑社 1971年9月6日号)では「女子大生 真夏のフレッシュヌード」というタイトルで早稲田大、大妻女子大、実践女子大、東京家政大の学生が登場する。東京家政大の学生が「良妻賢母と人のいう ああ我れひとり 刃向かいて 東大解体のあと 凝固する女子大生意識」と話す。時代と向き合ってきた感が表れている。

 『週刊サンケイ』(1971年10月15日号)は、1カ月後に「女子大生フレッシュヌード秋の詩」を掲載した。前回の特集がよほど評判が良かったのだろうか、早稲田大、法政大、共立女子大の学生が登場している。早稲田大の学生が「ワグナーの音楽、トリスタンとイゾルデのように……愛のために死ぬことができるなら、わたしは喜んでこの体を捧げよう」と話す。

 『週刊現代』(講談社 1973年7月19日号)の特集は「この大学でみつけた凄いチャーミングな彼女」。早稲田大、慶應義塾大、津田塾大など5人の学生が登場する。唯一水着姿の日本大生は「旅行にも出かけたくて。今年は北陸にしようかな。となると旅行資金獲得のためにもっとアルバイトに精を出さなくては、ああ、体がいくつあっても足りないわ」。

 1970年代、女子学生はどんどんキャンパスの外に出た。「体がいくつあっても足りない」ほど。大学、家庭から解放されることによって、生きること、そして闘う場をさまざまなところに求めた。同時に男性の側、社会の側からの「型にはめる」圧力はつねに掛かり続けていた。「女子大生フレッシュヌード」は、この自己実現と圧力という二つが同時に、当時としてもっとも極端な形で現れたもの、と言えるかもしれない。

 一方、1970年代後半にはこんなことが起こっている。女子学生がジーパン姿で授業を受けようとしたところ、一大学教員から圧力を受けてしまう。女性を衣類で型にはめようとする考え方を強いられてしまった。当然、衝突してしまう。

 1977年、大阪大の「ジーパン論争」である。同大文学部でアメリカ人非常勤講師がジーパンをはいた女子学生に「出て行きなさい」と言って教室から追い出してしまった。アメリカ人非常勤講師は「ジーパンはレディにふさわしくない」「レディは繊細で、確かさと落ち着きがなければならない」と持論を展開するのに対して、ジーパン着用に女子学生は「男がはいてよいものを、女がはいてなぜいけないのか。女性差別だ」と反発した(談話はいずれも朝日新聞1977年5月30日)。

 このできごとの第一報を伝えた記事(朝日新聞5月25日)に対する読者からの反応は熱かった。アメリカ人非常勤講師支持が圧倒的に多かったと同紙は伝える。だが、女子学生にジーパンを禁じて講義を受けさせないというのは、女性差別であるとともに学ぶ権利を奪う、理不尽な教育上の判断である。1970年代になっても、まだこのような論争が起こっていたとは信じ難い。

 それでも女子学生は自分を表現する場を貪欲に求めようとした。これに対して、メディアは手ぐすね引いて待っていた。女子学生を「女子大生」という商品に仕立てて、そこに新しい価値を見いだし金儲けしようとした。女子学生は消費されることを知りつつ、それを逆手にとって、自分の大きな武器になりはしないかと考える。闘うために。

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