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通常の年なら、夏休み真っ只中の8月。だが、今年は全国各地の小中高校で、夏休みが縮小されたところも珍しくはない。新型コロナウィルス感染対策として、3月から5月末にかけて全国の小中高校、大学の多くは休校措置をとったからだ。
6月から段階的に休校は解除されたが、7月以降、また全国の新型コロナウィルス感染者数は増加している。夏休みまではなんとか終えた感があるが、二学期を何事もなかったかのように再開できるのかどうか、不透明だ。
長い休校中は、各自治体や学校の対応に大きな差が出ていた。早々にオンライン授業を取り入れた学校もあれば、大量のプリントと時間割を見比べながら自学自習をする他ないという学校も多かった。
「学力格差」という言葉もあちこちで聞かれた。「いま、求められている教育とは?」などという議論があちこちでなされていた。
しかしこの間、現役の教師の声は、それほど多く聞こえてこなかったのではないか。
「先生たちは、あの時、どうしていたんだろう。今、どう考えているんだろう?」
筆者は、小学生の子どもを持つ一保護者として、ずっと疑問を抱いていた。
4月からオンライン授業に踏み出したが…
今回、取材を受けてくれたのは、石田雄介さん(仮名・47歳)。
私立の中高一貫校で、教諭をしている。3月から5月末までの休校期間を経て、現在は短くなった夏休みを前に分散登校による授業を続けているという。
「全国の小中高に3月2日から臨時休校要請が出され、わが校も休校措置をとりました。最初のうちは、教員は毎日、今後の対策について話し合う日々。でもスムーズにはいかず、各家庭のwi-fi環境を調べたり、オンライン授業の体裁を整えたりして、オンライン授業を開始できたのは結局、4月に入ってからでした。
何しろ学校は、昔ながらのアナログな世界なので……。パソコンをあまり使ったことがないとか、ダブルクリックの方法もよくわからないという先生方も結構いて、正直、オンライン授業は無理かなあと思っていました」
それでも、そんなことは言っていられない。私学ともなれば年間の授業料も安くはないわけで、非常事態だからと言って何もせず手をこまねいているわけにはいかないのだ。
若手教師を中心に、システムを使ってホームルームや授業の動画配信を中心に行い、生徒からの質問やフィードバックはメールまたはアンケートフォーム等で受け付けるという形をとった。
「内容については各教科担当に任されていたので自由度は高く、その点はやりやすかったです。私は教科主任なので、うちの科については特に若手の先生をリーダーにして、積極的に動画を作ってもらいました。まあ、年配の先生たちには色々言われましたけどね。でもそこはやれる人がやらないと……。若い先生たちも上手に、先輩の先生方の好きな曲をBGMに使ったりしてうまくやってくれました」
それでも「一日に数科目、数時間の動画配信だけでは足りない」と、何件か保護者のクレームもあったという。
「親御さんとしては当然ですよね。双方向でリアルタイムの授業ではないから、生徒はいつ配信を見てもいい。となるとどうしても、生活は不規則に乱れるわけで。親としては子どもが部屋で授業を受けているのか、ネットゲームをしているのかも見分けがつかないですからね。学校への不満も大きかったと思います。ご意見をいただくことはありましたね」
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