コロナで変わる学校「既存のクラス作りはもう出来ない」

文=玉居子泰子
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子どもたちは、大人の矛盾をわかって学校に来ている

 一方、子どもたちは、家で漫然と過ごすことに飽きてくる。早起きしなくていいのは楽だろうが、定期試験はあるわけでそれなりに勉強もしなくてはいけない。友達とも会えず、親に小言を言われて自習する生活が楽しいわけでは決してないだろう。

「6月に入り学校を再開してみて気づいたのは、生徒たちはやっぱり学校に来たがってたんだな、ということ。当然、登校したい理由の第一はやっぱり友達に会いたいってことでしょうね。嬉しそうな顔をしている子が意外と言ってもいいくらい多かったのは、ホッとしました。

 ただ一方でコロナ休校以降、不登校というか、学校に期待していない、来るのが嫌になったという子たちもやはりいます。増えています」

 冷静に子どもたちの表情や状況を見ていく中で、石田さんは、生徒たちが学校に求めているものが数カ月前とは確かに変わっているのを感じたという。

「以前と同じように、学校に生徒が戻ってくれば、以前と同じような学校が始まると期待していた教員は多いと思います。実際、自粛が開けて学校を再開した時、子どもたちの多くは嬉しそうでした。でも、本音のところでは違うと思うんです。子どもたちにはこのコロナ禍の中での大人や社会の矛盾みたいなものを、もうはっきり見ていると思いますよ。

 いくらオンラインで『コロナに打ち勝とう!』とか『乗り越えよう!』とか言っている先生がいても(実際にいらっしゃったんですが……)、こんなに圧倒的な力で世界中を危機的状況に陥れている感染病があるんですから。乗り越えられるようなものじゃないってことくらい、生徒もわかる。

子どもたちは、学校や大人がなんとかしてくれるわけじゃないと、どこか諦めたり、無力感を覚えたり、しらけた気持ちも持ってますよ。それでも居場所は欲しいから、家でずっと引きこもっていたくないから、だから学校に来てるんだ、ということなんだと思います」

既存のクラス作りはもう実現できない

 石田さんがいうように、これまで通り毎日学校に行って、それなりに学習をしていれば進学できて、安定した仕事に就ける、といったエスカレーター式の道筋は、もはや誰にも約束されていないだろう。

 学校という組織は、集団で学ぶ形式をとることで、人間関係の基礎やチームワークを得るという意味合いも強いが、それもこれまで通りにはいかない、と石田さんはいう。

「日本の学校では、『クラス作り』が重要視されてきました。でも、この状況で今までと同じように『こういうクラスを作ろう』『みんな仲良く助け合うクラスに』などと言っても、中学1年生とか高校1年生とか、初めて出会う子たちがいる学年は特に、なかなかうまくはいきません。

 そうでなくても分散登校で、クラスの半分の生徒とほとんど会えていませんから。今の状況じゃ、体育祭も文化祭も、部活や合宿、修学旅行も、実施は厳しいでしょう。そんなかでこれまで通り、クラスを盛り上げようとか、力を合わせようとかいう教育は、土台無理ですよ」

 既存のクラス作りができなくなったという今、学校は子供たちにとってどんな場所であればいいのか。当然ながら子どもたちは、みんながみんな学校が大好きというわけじゃない。一斉授業を聞いていればある程度理解できる子もいるが、そうじゃない子もいる。みんなで一緒に体を動かすことや、何かを成し遂げて感動するタイプの子もいれば、自分の興味を静かに追求するのが好きな子もいる……。石田さんは、後者の子たちに寄り添える可能性をオンライン授業に感じたという。

「これまでの学校教育って、フェイスtoフェイスで、顔を合わせて教師が何かを伝えればうまくいくと信じられているところがありました。でも、『個性を大切に』とか『一人一人光るものを見つけよう』というようなことを言っていても、結局一斉授業だと、一定の模範解答を教師は求めてしまう。でも実は子どもたちが求めているのはそうじゃない。

 休校中はオンラインで動画配信をすることしかできないけれど、メールで質問などは受け付けていたから、やりとりが一対一なんです。ここがわからないとか、こういうことに困っているっていう生徒一人一人からのメッセージを受け取りやすかった。時間はたっぷりあったから、生徒の話を聞いたり寄り添ったりが、教師側もできたんですよね」

 教壇に立つ教師が多くの生徒に教鞭を振るうやり方ではなく、横に座って、話を聞いて寄り添ってサポートしてくれるような教師像が求められていると感じたそうだ。

 だが、長年にわたり少しずつ積み上げられてきた学校システムを変えていくのは、簡単ではない。石田さんのようにこの変化にどうにか対応していこうと考える教師たちが、どう行動を起こしているのか。後半では具体的な取り組みを聞いていきたい。

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