ポテサラ、餃子、唐揚げ…手作りへのこだわり、なぜ? 日本人は家事をやりすぎている

文=中崎亜衣
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GettyImagesより

 ポテサラ、餃子、唐揚げ……手作りの家庭料理についての議論が活発化している。

 7月にTwitterで、スーパーで高齢男性が子連れ女性に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言って立ち去った……というツイートが大きな話題を呼び、論争に発展した。8月上旬には、夕食に出した冷凍餃子を喜んで食べる子どもに対して、夫が「手抜きだよ。これはれいとうって言うの」と吹き込んだ……というツイートが反響を集めた。その流れで今月10日には、「唐揚げ」がトレンド入りした。

 「唐揚げ」トレンド入りのきっかけは10日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)だ。番組では前述した「冷凍餃子」をめぐる反響を受け、街頭インタビューを実施したところ、妻と二人の子どもを持つ男性が「簡単にできる料理? 唐揚げとか。揚げるだけですからね」と返答。妻をびっくりさせていた。

 唐揚げは味を染み込ませるなどの工程があり、手抜きではないのだと妻が説明しても、男性は「でもやっぱりジャンクフードですからね。ジャンクフードは手抜きですよ」と腑に落ちない様子だった。コンビニのホットスナックとして馴染み深い「唐揚げ」だけに、ジャンクフードという表現になったのだろうか。

 妻の目の前で「唐揚げ」を「手抜き料理」と言い切った男性に、ネット上では怒りの声が噴出。炎上状態になった。ただ、家庭のキッチンで揚げ物を調理することの面倒くささを知らないというのも今どき珍しく、ヤラセインタビューを疑う声もある。

豊富な冷食や惣菜、誰もが買っている

 ポテトサラダは、じゃがいもを茹でて熱いうちにつぶし、薄く切っておいた他の材料や調味料と混ぜ合わせて作る。餃子は材料をみじん切りにしてよくこね、一枚ずつ皮に包んで焼いたり茹でたりする。唐揚げは肉を食べやすい大きさに切り、調味料で味をつけ、衣をつけて中までしっかり火が通るように油で揚げる。いずれもとても簡単な料理とは言えず、「〜ぐらい」と言い表すのは不適当な逸品だろう。

 「冷凍餃子」が「手抜き」か否かをめぐっては、今月6日に味の素冷凍食品がTwitterの公式アカウントで<冷凍餃子を使うことは「手抜き」ではなく「手“間”抜き」ですよ!><私も2児の母ですが、惣菜ポテサラも冷凍餃子も…使うことに何の罪悪感もありません!>と言及し、これも話題を呼んだ。

 こういった炎上自体に食傷気味だという意見も多い。確かに筆者も、冷凍食品や総菜の需要がこれだけあるのだから、多くの人がすでに抵抗なく食卓にそれらを並べ、美味しくいただいているのではないかと思う。近所のスーパーでは冷凍食品も惣菜も品揃えが豊富で、老若男女問わずどんどん買っている。彼らは罪悪感を覚えながら、あるいは家庭で文句を言われながら、そうした食事を用意しているのだろうか?

丁寧な暮らしだけが良い暮らしか

 家事をめぐる論争では、「家事について無知な男性(夫)が女性(妻)に高い要求をする」という構図がよく使われがちだが、女性同士で高い家事プレッシャーをかけている側面もあるだろう。そもそも日本は丁寧に「家事をしすぎ」ではないかとの指摘もある。

 翻訳家で掃除やエコについて研究する佐光紀子氏は、著書『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社)において、日本では『ちゃんと家事』のプレッシャーが浸透しており、とりわけ女性は家事を丁寧にすることに縛られ過ぎているのではないか、と述べている。

 日本は他国と比べ、家事に時間と手間をかけすぎており、女性の家事負担は大きく、一方で日本人男性は他国の男性に比べて家事時間が少ない。背景には、多方面での「丁寧な家事」賛美があり、女性自身も家事を“すべきこと”と考え、「丁寧な暮らし」に憧れることもあるためではないか、と。

 実は世界各国を見渡すと、家事にそこまでの時間や手間をかけておらず、特に料理は、屋台で購入した品物を食卓に並べるのが一般的という国もある。パンとチーズとソーセージのみなど品目数が少なくても、冷凍食品をオーブンで温めるだけでも手抜き扱いされることはない。栄養不足で子どもがかわいそう、などという心配も無用だ。

 「丁寧な家事」や「手作りの料理」に、良い面はもちろんある。だがそれは絶対ではなく、家事の水準が高すぎることで各々の家庭が崩壊してしまえば元も子もない。「自分の母親はこうしてくれた」などと憧憬を抱くのは自由だが、実情に見合わない理想は有害にもなり得る。現実とよく向き合って、生活していきたいものである。

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