8割が「相談できなかった」…性暴力被害者が「自分も悪い」と口を閉ざしてしまわないように

文=みたらし加奈
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——LGBTQ+、フェミニズム、家族・友人・同僚との人間関係etc.……悩める若者たちの心にSNSを通して寄り添う臨床心理士が伝えたい、こころの話。

 

 「性暴力」と聞いた時、あなたはどんなことを想像するだろう? レイプ、強姦、痴漢、盗撮、わいせつ、淫行、みだらな行為……私たちの暮らしている国では、「性暴力」にさまざまな“名前”が付けられている。しかしながら、それらを「性暴力」として受け止められている人は少ないかもしれない。

 以前、私のTwitterで「今まで性被害にあったことはありますか?」というアンケートをとった。補足として「性被害とはレイプ、性的虐待、痴漢、卑猥な言葉をかけられた、性器を見せられた等を含みます」と追記した。結果は想像を絶するものだった。なんと全回答者4777人のうち、68%が「ある」と回答をしたのだ。 

 アンケートではさらに、「『ある』と回答された人に質問です。その事柄について専門機関(医療、警察、その他の組織)に相談をしたことはありますか?」という質問を加えた。すると、83%の人たちが「行動に移せなかった」と回答し、そのうちの29%は「専門機関を知っていたが行動に移せなかった」、54%が「専門機関を知らず、行動に移せなかった」という。

 この結果を受けて、「どれほどの人たちが性被害に苦しみ、ひとりで抱えてしまっているんだろう」と感じた。しかもこの結果は、氷山の一角にすぎない。日本ではまだまだ、性被害を訴えにくい現状があるのだ。

「自分も悪かったかもしれないから」 重く受け止められない性被害

 高校生の時、学校に行くと、必ずと言っていいほど誰かが「痴漢に遭遇した」話をしていた。しかし、それらの話は大抵が「性暴力」として受けとめられているわけではなく、「気分が悪かった話」として、ただの日常の1コマとでも言うかのように軽く話されることだってあった。時には話の“ネタ”のような感覚を持っている子だっていた。そして私自身も、そのうちの1人だった。

 他人がする「性暴力」の話は真剣に聞くことができるのに、自分の身に起こった「性暴力」の話は、どこか軽く受け止めなければならないような気がしていた。だって自分も悪かったかもしれないから。こちらにも「相手にそうさせてしまった」一面があるかもしれないから。

 夜道を一人で歩いたから。お酒を飲み過ぎてしまったから。肌を見せていたから。ちゃんと断れていなかったかもしれないから。

 そうやって少しずつ、少しずつ、私たちの心はすり減らされ、「自分も悪い」と刷り込まれていたように思う。

 日本では、どこかで性暴力を「仕方のないこと」として、受け流さなければいけないような風潮が確かにあると思う。心のどこかで、「性加害をしてくる人間」という存在を“避けては通れないもの”として諦めなければならない状況があったし、大人になった今だって同じだと思う。例えそれを告発したとしても「隙があったのではないか」とか「服装に問題点があったのではないか」というように、しんどい思いをしている側に非があったかのように捉えられてしまうことも少なくない。

 また、時には自分自身が、誰かに対して「あなたに隙があったのではないのか」と責める側に回ってしまっている可能性だってある。

 しかし、私は伝えたい。私たちは、傷付いていい。自分の心の傷を認めてもいい。悲しい思いをしながら、自分自身をさらに責める必要なんてない。重く受け止めていいし、誰かに助けを求めてもいい。自分を傷つけた相手に気を遣ってしまったら、もしかしたらその相手は同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。

“NO means NO”な性的同意の概念

 レイプ被害の8割以上は、友人や知人、身内などの「顔見知り」からの被害だと言われている。「レイプ」というのは、知らない相手からの性暴力だけを指しているわけではない。例え恋人同士や夫婦だったとしても、「レイプ」は起こりうることなのだ。どちらかが「同意」をしていないまま性行為に及ぶことは、性暴力と言っていい。

 ハワイで暮らしていた時、「日本人は“Japaneasy”だから、声をかけられやすいんだよ」と言われて驚いた。“Japaneasy”とは、“Japanese”と“easy”を組み合わせた造語で、「日本人の女性は、容易く性行為をさせてくれる」という意味合いが含まれている。

 また、友人に「日本人はセックスの時に“YAMETE”って言うんでしょ?」と聞かれたこともある。こちらから改めて“YAMETE”の意味を聞くと、「セックスしてもOK」という意味だという。「YAMETEという言葉は、本来の日本語だとNOとかSTOPという意味であって、CONTINUE(続ける)の意味ではないんだよ」と伝えると、友人は驚きながら「なんでYESの意味で広がっているんだろう……」と呟いた。

 日本では「性的同意」はなかったことのように扱われやすいし、性被害だって告発しにくい。そんな現状が海を超えて他国へと伝わり、搾取をしようとする人たちに都合よく解釈されてしまっているのだ。女性として生まれてきただけで「性的に消費していいモノ」として扱われやすい社会は、絶対に変えていかなければならない。

 日本では驚くほどに「性的同意」の概念が広まっていないと感じている。“NO”と言ったのに“YES”と捉えられてしまうセックスをするうちに、「性行為」そのものに嫌悪感を覚え、セックスレスや性嫌悪に繋がってしまうケースだってある。

 また「性的同意」の概念をSNSなどで呟くと、なぜか「同意書が必要なのか」「同意の取り方を教えてくれ」という意見が出てくることが多い。ここで指す「性的同意」というのは契約ではなくコミュニケーションの1つだ。人間は一人ひとり違うからこそ、紋切り型の答えなんてあるはずがない。それでも、「いやよ、いやよも好きのうち」という言葉の認知度が高い日本では、どうしてもコミュニケーションに齟齬が生まれてしまう場合がある。だからこそ、“NO means NO”“YES means YES”という性的同意の概念は、「言う側」も「言われる側」にも広がっていくべきだと感じている。

女性だけではない、性暴力の被害

 「性暴力」というと、“女性のトピック”のように扱われることが多いが、実は男性や子どもが被害にあっているケースも少なくない。表に出ている統計データはごく一部で、声を上げられない男性や、未成年の子どもたちが被害に遭うケースも後を絶たない。特に男性の場合、性被害について「良い経験値」のように受け止められてしまうこともあるため、ますます声を上げにくい現状があると感じている。

 また、異性から受ける性暴力もあれば、同性から受ける性暴力だって存在している。LGBTQの当事者が同性から被害を受けた場合、告発をする際に「カミングアウト」を伴ってしまうため、どうしても表面化されにくい。だからこそ、性別やセクシュアリティに関わらず、すべての人が当事者意識を持って「性暴力」や「性的同意」というものに向き合っていってほしいと願っている。

 飲み会で体を触られることも、痴漢されることも仕方ないのだろうか。同意のないままに性行為に持ち込まれることも、「性的なモノ」として消費されていくことも受け流さなければならないのだろうか。「女はいいよね、最後は身体を売ればいいじゃん」って言われても、笑顔で乗り切らなくてはいけないのだろうか。「男は性被害には遭わない」なんて思想を押し付けられてしまってもいいのだろうか。性暴力に遭った時に、それを「自己責任だ」なんて思ったり、他人に言われてもいいのだろうか。自分や大切な人が性暴力に遭遇した時に「仕方のないこと」として終わらせていいのだろうか。

 答えは、「NO」だ。

 あなたの体はあなたのものだし、私の体は私のものだ。それを侵害されてしまうような出来事は、絶対にあってはならないことなのだ。繰り返しになるが、私たちは傷ついていい。自分を守ってもいい。そして、傷ついた心や身体をケアしてもいいのだ。

 どんなことであったとしても、私は「しょうがないや」と、自分で苦しいことをバランス取らなきゃいけないような世の中で生きたくない。「うまく生きなきゃ」なんて思うことは、絶対に「当たり前」のことなんかじゃない。私の大切な人たちにだって、そんな場所で生きてほしくないと思う。

 今の私にできることは、性別やセクシャリティに関係なく、声を上げられない人たちの代弁をすることと、そういった人たちに寄り添うこと、しかない。

 私は今、「mimosas(ミモザ)」というNPO法人に携わっている。mimosasは、性被害に遭ったサバイバーだけではなく、すべての人たちに向けて、弁護士・医師・臨床心理士などの専門家と共に「知っておいてほしい“正しい情報”」を発信している。例えば、被害にあった時に相談できる窓口や弁護士費用、またトラウマとの向き合い方やメンタルケアについても、分かりやすく解説をしている。興味のある人は、以下のリンクから飛んでもらえたら嬉しい。

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mimosasでは、Instagramをはじめ、SNSを中心に発信を行っている。(c)mimosas

 私たちには無限の選択肢があって、その中には「知ることで変えられる未来」だってあるのだ。性別やセクシュアリティに関係なく、性暴力に遭った全ての人たちが自分自身の傷に気がつくことができ、ひとりで抱え込まないような未来になってほしいと、心の底から願っている。

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