打倒トランプに立ち上がった共和党の大物たち〜ザ・リンカーン・プロジェクト

文=堂本かおる
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写真:ロイター/アフロ

 8月8日、トランプがまたもや大統領令を発した。コロナ禍により失業率が10.2%と依然として高い今、「失業保険の受給額に週400ドルを上乗せする」というものだ。選挙向けのスタンドプレーである。

 いつから発給するかは不明。財源も4分の1は州に負担させると言うが、すでに財政難で賄い切れない州もある模様。また、超低賃金者は受給できない可能性もある。そもそもこれは議会で法案を通過させるべき事案であり、大統領に発令権限はないとする専門家もいる。トランプはつい先日も、発令権限のない大統領令を発するつもりだと発言している。オバマケアによってすでになされている「既往症患者を医療保険から締め出さない」を、まるでトランプが新たに定めたかのように扱う大統領令だ。

 大統領選まであと3カ月となった今、コロナ対策の失敗が理由でトランプの支持率は下がっている。かつ民主党候補のジョー・バイデンは今週中にも副大統領候補を指名する予定で(注:8月12日、カマラ・ハリス上院議員が指名された)、バイデン陣営は選挙戦をそこから一気に盛り上げていくと思われる。焦るトランプは、失業保険400ドルも既往症もニュースに疎いトランプ支持者を「さすがトランプ!」と高揚させるために大統領令として連発するのである。

 ちなみに8月初旬現在、全米のコロナ感染者は累計で500万人超、死者は16万人を超えている。

先の見えない経済不況

 コロナ禍によるロックダウンで経済が停滞して大量解雇が発生した3月、通常の失業保険に週600ドルが加算された。それが7月末で終了した。

 失業率は4月に14.7%を記録。リーマン・ショック時をはるかに超える数字だった。累計では4,400万人を超える人が失業保険を受給した。当初、あまりの人数に申請受付システムがパンクし、受給までに長期間を要した。

 その後、州ごとにロックダウンが解除され、失業率はやや改善した。しかし今も大手チェーンの破産や規模縮小、それに伴う大量解雇が起こっている。経済の専門家は、初期に解雇された人よりも夏以降に解雇された人のほうが再就職が難しいとしている。ロックダウン解除による再雇用は、初期に失業した人たちによってすでに埋められてしまったのだ。

 こうした先の見えない状況下、600ドルの加算が無くなり、かつ家賃未払いによる立ち退きを猶予する時限法も州ごとに切れつつある。これが何を意味するかと言えば、大量のホームレスの発生だ。

コロナ・不況・学校再開

 週600ドルの加算は実態を知らねば「贅沢」に思えるだろう。当初、アメリカでも失業しなかった人たちは「失業するほうが実入りが増えない?」とジョークを発した。だが、本来の失業保険の平均額は週400ドル程度。この額では最低限の衣食は賄えても家賃や各種ローンを払うのは無理だ。しかもいつ再就職できるか全く分からない状態でもある。

 アパートを立ち退かされてもホームレス・シェルターはすでに満杯だ。親族や友人の家に身を寄せられる人はまだ幸運と言えるだろう。少ない貯金を削って日払いの安モーテルに暮らす人もいれば、行き先がなく路上生活を余儀なくされる人もいる。

 幸いにもコロナに感染しなかった人々も、経済的に大変な状況に置かれているのだ。さらに今、全米あちこちの州で学校が再開しつつある。校内のソーシャル・ディスタンスや消毒は完全に行えるのか。子供は果たして感染しないのか。しても無症状や軽症で済むのか。教師は感染しないのか。親や高齢の家族への感染はどれほど起こるのか。疑問と問題が山積の中、トランプは学校再開を推し進め、再開しない州には予算を出さないと脅迫すら口にした。ホワイトハウス報道官のケイリー・マクナリーは「大統領が学校再開すると言えば、完全な再開を意味します」「科学がそれに対抗してはなりません」と、驚くべき擁護を行なった。

 米国の現大統領とその一味に、アメリカ市民をコロナと経済破綻から守る意思は全くないのである。

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