打倒トランプに立ち上がった共和党の大物たち〜ザ・リンカーン・プロジェクト

文=堂本かおる
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大統領の「レイシズム、セクシズム、ナルシシズム」

 トランプの支持率は低迷しているとはいえ、強固な支持者もいまだ健在だ。そんな中、共和党の大物でありながらアンチ・トランプを唱えて共和党を離脱し、トランプ再選阻止の活動を始めたグループがある。ザ・リンカーン・プロジェクトと称するそのグループは、強烈なパロディを含んだアンチ・トランプ動画を発表し続けている。

 動画のひとつは、コロナ禍の初期にトランプがコロナを「無いもの」と言い続けた映像をつないだもの。トランプの「2~3日でゼロに近くなる。我々は素晴らしい仕事をした」「ある日、奇跡みたいに消え去るだろう」と言った発言をいくつも見せた後に「6カ月後」のテロップを流し、R&B曲が流れる。歌詞は「私、私、私(コロナ)は今もここにいる」である。

 アメリカの甚大なコロナ被害はトランプの初動の「遅れ」などではなく、コロナの存在の否定にあると批判しているのである。

 最新作はトランプの品性と知性、国家への裏切りが知れる発言映像をつなげ、「トランプに投票したことを後悔している」とする強烈なものだ。以下はその映像に現れるセリフである。

・目に余るレイシズム
・露骨で下品なセクシズム
・まともではないナルシシズム
・ナチス迎合
・小児愛者を支援
・セクハラ野郎であると誇らしげに自慢
・雇用者を堂々とごまかす
・障害者を嘲る
・残忍な独裁者を賞賛
・絶え間なく病的な嘘をつく
・狭量で悪意ある残忍さ
・圧倒的な愚劣さ
・開き直りの腐敗
・縁故主義
・マフィアとの繋がり
・自分の権限に疑問を投げかける者への暴力奨励
・山のような個人債務のために我々の税金を盗む
・そして、もしくはゴルフに行く
・絶え間なく嘘をつく
・お前は嘘つきだ
・白人国粋主義者
・移民を悪の根源だと言う
・権利章典の無視
・ロシアの選挙介入を知っておきながら嘘をつく
・嘘をついたことについて嘘をつく

アメリカ復旧への長く険しい道のり

 アメリカの選挙ではネガティブ広告はよく使われるが、現役大統領をこれほどまでに激しく批判するものはなかった。アメリカには党派を超えた自国リーダーへの敬意が常にあったからだ。ところが今、アメリカは前代未聞の破滅の縁にある。だからこそ民主党ではなく、トランプを擁した共和党側からトランプ排斥運動が起こったことに大きな意味がある。アメリカにまだ希望があるのだ。

 とは言え、共和党員である(であった)リンカーン・プロジェクトのメンバーにとっては非常に辛い戦いと言える。トランプの再選阻止はすなわちバイデンの当選を意味するが、リンカーン・プロジェクトのメンバーは民主党に鞍替えしたわけではない。したがってバイデンを推すことはしない。政治信条上、出来ないのだ。

 さらに、リンカーン・プロジェクトの中心人物は弁護士のジョージ・コンウェイである。コンウェイの妻は、ホワイトハウス顧問のケリーアン・コンウェイだ。ケリーアンはトランプの選挙戦中から先述のケイリー・マクナリー報道官同様、もしくはそれ以上の詭弁を駆使してトランプ擁護を続けている人物である。つまりトランプが支離滅裂かつアメリカと世界に有害な言動を起こすたびに妻は必死の形相で擁護し、夫が痛烈に批判するという構図が繰り広げられている。

 コンウェイ夫妻が政治信条の違いにどのように折り合いを付けているのかは第三者の知るところではないが、おそらく容易ではないだろう。同様にアメリカも今、「大統領はレイシストで、セクシストで、愚劣で、残忍で、嘘つき」と言い続けねばならない、非常に辛く苦しい状態にある。だが、トランプを当選させたのはヒラリーに投票した民主党支持者や投票しかなかった者をも含め、アメリカである。冒した過ちは自身で克服するしかない。この苦しみは避けて通れない道とし、11月の大統領選でトランプ再選を阻止し、そこから時間をかけて、かつてのアメリカへの復旧に取り組まなければならないのである。
(堂本かおる)

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