
GettyImagesより
(※本稿の初出は『yomyom vol.62』(新潮社)です)
「500歩サッカー」という“ゆるスポーツ”を開発中だ。共同開発者は15歳のたけひろ君。彼は心臓病のためペースメーカーを使用しており、激しいスポーツはできない。そんなたけひろ君でもプレーできるスポーツが「500歩サッカー」だ。
競技者全員、腰に「500歩サッカーデバイス」を装着する。試合開始時には「500」と表示されていて、一歩あるくごとに歩数ゲージが1つずつ減っていく。それぞれ500歩までしか歩いてはいけない、という制限を設けたサッカーだ。通常のサッカーのように、先回りしたり、カバーに入ったり、全速力で戻ったり……とフットワークを生かすと、簡単に500歩を使い切ってしまう。
持ち分の歩数を回復させる方法は休憩すること。試合中、立ち止まって休憩すれば4秒目から歩数ゲージが回復していく。いかにボールをゴールまで繋ぐか、ということと同じくらい、いかに休むかということがプレーの一環となってくる。激しい運動ができない人も、目一杯走り回れる人も、休み方を計算しつつ動き方を考え、一緒にゲームが楽しめる。
2014年に、「世界から、スポーツ弱者をなくす。」というスローガンのもと、「世界ゆるスポーツ協会」を立ち上げた。もともと私は運動が大の苦手で、学生時代、体育の授業時間は拷問だった。三点倒立のテストでクラスの全員(女子含む)がクリアする中、自分だけができず恥ずかしい思いをした小学生の頃の記憶は、一生消えないだろう。また、私には全盲の息子がいて、福祉の現場に関心を持つようになったことも大きなきっかけの一つだった。
運動が苦手な人や障害のある人でも、楽しめるスポーツってなんだろう。今あるスポーツが楽しめないなら、いっそ作ればいい! そう思ったのがゆるスポーツの原点だ。