デビュー時より力強いアティチュードで人々に勇気を与え続けているITZY。
だが一方、現状における彼女たちを取り巻いている環境を考えれば、世界の視線を集めるK-POPアーティストとして、表舞台に立つ者として、そして一人の人間として、本人たちの“自己の主体性”を守ることがいかに困難であるかということも目を背けがたい事実であるように思える。
ITZYの伝えるメッセージとは、作品そのものが持つメッセージ性だけでなく、それを伝える彼女たち自身が受け手の心を動かす表現者であるからこそ特別さをはらんでいることは先ほどに述べた通りである。
しかしながら未だルッキズムの目にさらされ、またあらゆる局面において“正しい”姿を求められるアーティストとしての彼女たちが置かれている社会的立場は、その表現が伝える特別さとはかけ離れてしまっているように感じてならない。
そしてこの痛みは彼女たちやK-POPアーティスト、また表舞台に立つ者のみならず、多くの人々がそれぞれの立場から感じられるものだからこそ、ポップカルチャーにおいて“自己と他者の主体性”を肯定することが重要性をはらんでいるという現状があることも複雑さをもたらしているようにも映る。
もちろんアーティストとして、いち人間として持つ本人の真意というのは、こちらには全く計り知れないことだろう。とは言え、彼女たちが作品を通じて放つメッセージに心を動かされれば動かされるほど、その思いを享受し、彼女たちに代弁者の立場を仮託するばかりではならないのではないだろうか――そんな深刻な考えが頭をもたげるのである。
(菅原史稀)