
GettyImagesより
エセスピリチュアルや疑似医学をベースにした科学的根拠のない健康法。そんな「トンデモ」の沼へ、家族がハマってしまった体験を語ってもらう「身内がトンデモになりまして」シリーズ。
前回に引き続き、妻が子宮系女子の有名人「子宮委員長はる(現在は八木さやに改名)」に感銘を受けたことからタントリックヒーリングという物件にハマった、30代男性N氏の体験談をお届けしていきます。
妻が怪しい性的セラピーに没頭…三人の子を抱える夫がとった行動とは?
エセスピリチュアルや疑似医学をベースにした科学的根拠のない健康法。そんな「トンデモ」の沼へ、家族がハマってしまった体験を語ってもらう「身内がトンデモに…
タントリックヒーリングとは、Nさん曰く「仙骨と頭に手を置いて“気を回す”だけで、触れられている人がオーガズムに達するというふれこみの妙術」とのこと。オーガズムで子宮が収縮する点が、不妊改善にも効果を発揮するのでは? という考えから、有料で勉強会を開催するグループでの活動にのめりこんでいったNさんの妻。違和感のある発言が増え、夜な夜な車中で「遠隔セッション」を繰り返す姿に疑問と不満が爆発したことから、みずからも勉強会グループに参加したNさん。「遠隔セッション」を体験するものの、彼女たちが口にするような性的な満足感やヒーリング効能は全く感じられなかったと言います。
N氏(以下、N):妻はその後も「何もやましいことはしていない」と宣言し、堂々と仲間の男性ヒーラーに会いに行きます。そのようなとき、子どもたちは実家や妹一家に預けていました。ところが、嘘はありました。休日に女性ヒーラー仲間に会いに行くと言うので、妻の妹家族と遊んでいたのですが、後から妻のスマホを確認するともう1人男性ヒーラーも混ざり、3人でラブホテルへ行っていたのです。これはもう無理だと告げ、止める妻を振り切り、子ども3人を連れて妻の実家へ向かいました。
子どもを頻繁に預けるため(ちなみにNさんの実家は遠方で頼れない)、妻の実家には現状をすべて報告済み。急に訪れたNさん親子を快く受け入れて、さらに娘の所業を謝ってくれたといいます。限界値を超えたその夜、妻の活動についてアドバイスをくれたメンバーには感謝の意を、妻とホテルへ行った2人へは抗議の言葉を送ったうえで全員をブロックし、関わりを絶つことに。
N:しばらくは義父母の力を借り、妻の実家で子どもたちの日常を取り戻すつもりでした。そのために翌日、着替えなどの荷物を運ぶため自宅へ戻ったんです。すると僕の帰りを待っていた妻から「あなたといたい」という言葉があり、5時間ほど話し合いをしました。その内容はもううろ覚えなのですが、僕が子どもを連れて家を出たのが「自分軸」という子宮系思考の洗脳が解けるきっかけだったかもしれません。
スピを遠ざけ、家族を再構築
N:改めて振り返ると、妻は僕と出会う前はそこそこ性的に奔放なタイプだったようです。自分も同類なのでお互い様であり、それについては何とも思っていません。しかし妻は結婚後、わずかながら妻として・母としてこうあるべきというような抑圧を感じていた。そこで子宮委員長の存在を知り、奔放に生きる彼女に憧れ、性的な扉をみずからこじ開けた……と話してます。そこからすぐタントリックヒーラー勉強会というコミュニティに出会ってしまい、メンバーからは「もっとやれ」と囃される。それに過剰反応を示し、活動に歯止めがかからないようになったようです。
その後タントリックヒーラー活動はやめ、家族としてもう一度やり直すことを決めたN夫妻。妻は性を語る活動は続けているものの、タントリックヒーリングや子宮系とは手を切ったため「そこに異論を挟むようなことはしないつもり」とNさんは語ります。
今回の出来事で、N氏が最も違和感を覚えたのは、子宮系女子たちが連呼する「自分軸」という考え方だといいます。
N:行動・言動で相手を傷つけ、相手側の視点に立って理解しようとせず「受け入れろ」と強要してくるその有り様が、僕に最大級の嫌悪感を抱かせます。もともと「ひとりで生きる」というヤツが嫌いです。その理由は、社会的インフラの力を借りて生きているかぎり、ひとりで生きていくことは困難だからです。
『Into the Wild』という映画がありますが、その主人公並みにすべてを投げ打ち自然の中に身を投じる覚悟もない者が、ひとりで生きる! と、スマホを持ち洋服を着て水道水を飲み電気使って生きている様は、滑稽です。物事は球体であるのに、一側面のみについての思考を全盲的に信じ、それをあろうことか自身の生き方の礎(いしずえ)にまでしてしまい、主張したりする馬鹿が本当に嫌いなんです。
1 2