キャッシュレス派でも災害の備えに現金を! 

文=川部紀子
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 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。9月1日は「防災の日」です。皆様も防災週間のポスターなどを見たり、学校やマンションで避難訓練に参加したこともあると思います。筆者はそれらを形式的なものとしか捉えていなかったのですが、2018年9月6日夜中3時過ぎに北海道胆振東部地震で大規模な停電を経験し、初めて災害を現実のものとして捉えることとなりました。

 その後も各地で災害は発生しています。今年に入ってからも九州、中国、東海、東北は豪雨による水害がありました。そこで今回は災害とお金について考えていきたいと思います。

キャッシュレス時代でも力を発揮する「現金」

 政府のキャッシュレスポイント還元事業が終わり、9月からマイナポイント事業がスタートします。キャッシュレス決済各社もお得なキャンペーンをどんどん打ち出しています。同じ金額を使うなら、どう考えても現金よりもお得です。筆者もキャッシュレス派ですし、推奨しています。

マイナポイント最大5000円を確実に手に入れるための3ステップ

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キャッシュレス派でも災害の備えに現金を! の画像2 ウェジー 2020.06.22

 しかし、現金をバカにしたり、現金不要論のような極端な考え方は、災害大国といえる日本ではNGです。

 どんな災害にも停電が付き物です。停電が起これば、キャッシュレス決済は全て使えなくなってしまいます。筆者も北海道胆振東部地震の際に、すぐコンビニへ行きましたが、キャッシュレス決済が使えないだけでなく、お釣り切れでお札の使用も難しくなっていました。

 停電は翌日も続き、自家発電等で稼働していた一部のATMには人が殺到し大行列になっていたようです。そのATMに行こうにも電車も止まっていますし、車の運転も信号機が止まっているので容易ではありませんでした。

 今後、防災グッズには、ぜひ「小銭」を加えてください。

 ただし、キャッシュレス決済はお得ですし、いつも災害が起きているわけではないので、現金一辺倒で暮らす必要はありません。普段はキャッシュレスでも、災害時用にはすぐに対応できる小銭を備えておきましょうということです。

資産運用で差が付く時代でも「預金」も必要

 現在、普通預金も定期預金もほとんど利息は付きません。さらに紙の通帳の有料化のニュースもありました。通帳だけでなく、預けているだけで手数料がかかる時代も遠くないかもしれません。

 一方、資産運用は税制優遇のある制度もありますし、安倍政権下で株価は2倍超になったので、かなりの恩恵を受けた人が存在しています。

 税や社会保険料が上がる中、可処分所得(手取り)は下がっています。資産運用で差が付いている現実があるのです。

 しかし、急遽現金が必要になった時、預貯金に比べて、株や投資信託は換金しにくいものに違いありません。手続きの面だけでなく、値下がりしていることがあり得るので換金すると損失を生む可能性もあります。

 東日本大震災など大規模な災害時には、銀行・信用金庫・郵便局などで、通帳、キャッシュカード、印鑑がなくても、本人確認の上10万円~20万円の引き出しに対応していました。また災害直後に使うお金だけでなく、各種補修や当面の生活費にも、換金しやすい預貯金は威力を発揮します。

 キャッシュレス決済同様、いつも災害が起きているわけではありませんから、長い目で見ながら資産運用をしつつも、災害時に換金しやすいものも準備しておくことが大切です。

国などによる支援制度も

 一定規模の災害となり、基準を満たせば、国などによる支援制度を受けられる可能性も出てきます。

 例えば、住宅が全壊するなどで基礎支援金と加算支援金で最大300万円を受け取ることができる「被災者生活再建支援制度」は、住宅が半壊し、自ら修理する資力のない世帯に対して、被災した住宅の居室、台所、トイレ等日常生活に必要な最小限度の部分を一定額の範囲で応急的に修理してくれる制度です。

 滅失・損傷した家屋の復旧に対し低利融資を行う「災害復興住宅融資」も活用できる可能性があります。

 全てを元通りにしてくれるわけではありませんが、素晴らしい制度ですね。

まとめ

 もしもの災害のために働いて稼いでいるわけではありませんし、そのためだけに貯めたり備えたりするのは楽しいことではないので精神的にも滅入ってしまいます。

 しかし、災害の多い日本ですから、極端に偏った発想や行動も考えもの。1年に1度の防災の日ということで、防災とお金についても考えていただけたらと思います。

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