
『スッキリ』公式サイトより
新型コロナウイルスについて、感染症法上の分類を2類相当から5類へ見直すべきかという議論が行われている。
感染症は危険度の高い順に1類から5類に分類されており、1類にはエボラ出血熱など、2類はSARSなど、3類は細菌性赤痢など、4類はマラリアなど、5類はインフルエンザなどとなっている。
政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、見直しありきではなく、必要な対策や不都合な点をしっかり分析することが重要だと強調。27日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)でもそのメリットとデメリットについて、専門家の意見を交えた議論が行われた。
変更のメリットとデメリット
感染症法では2類相当の措置として、軽症でも入院勧告ができ、治療費は公費で負担されるほか、就業制限、消毒などの措置を取ることが決められている。
現在の新型コロナウイルス感染症に関しては、外出自粛やステイホームなど、一部で1類相当の措置も取られている。一方、インフルエンザなどが分類される5類になると、消毒を含めたいずれの措置も法律上は取らなくてもいいことになる。
いまこの議論が行われている理由は主に2つ。
1つは、今年1月末に新型コロナウイルスを2類相当と位置付けてから約7カ月かけて集まった知見をもとに、より効率的な対応を行うべきだという考え方だ。
『スッキリ』が取材した葛飾区保健所の担当者によると、保健所の業務は、疫学検査、感染経路や濃厚接触者の割り出し、感染者の入院措置に関する調整、発生施設の消毒など、通常の業務が行えないほど多忙だという。5類に見直されれば業務負担を軽減できるというメリットがある。
神戸大学医学研究科感染症内科の岩田健太郎氏は、見直しは理にかなっていると話した。
<穏当な議論で、調整する保健所や宿泊施設が圧迫されて、非効率なやり方をずっと続けているのは割に合わない>
しかし一方で、5類相当にするとことのデメリットもある。岩田氏はメリットと共に、人々の気の緩みに繋がるという危険も指摘している。
<5類相当で重症の患者だけ手厚く看護すればいいという考え方は、若者による市中感染は放っておいてもいいという誤解を生みかねない>
また、感染の抑え込みへの懸念を示す専門家もいる。取材に応じた緊急医療機関の院長は、入院勧告ができず私費負担になることにより市中感染が広がり、医療崩壊の危機を招く可能性や、また重症化を見逃しかねないなどのリスクを述べた。
インフルエンザの季節到来で危惧されることとは
分類が見直されている2つ目の理由は、毎年必ずやってくるインフルエンザの流行到来だ。インフルエンザとの同時流行は避けられず、医療機関や保健所の業務はさらに増加する。
また現状、熱がある患者はコロナの可能性があることから受診を断る街の病院も少なくない。インフルエンザのシーズンを迎えるにあたり、インフルエンザの患者さん含め熱症状のある人が検査機関に殺到する懸念があると、日本感染症学会指導医の水野泰孝氏は話す。
<熱が出ている患者をお断りしている診療所も少なくなく、そういう方が私のところへ来るケースも多い。風邪のシーズンを迎えたときに、本来ならかかりつけ医に行く体制がシャットアウトされる状態になると、新型コロナの検査もできるようなところに殺到してくると、(より危篤な患者に対応する)一次医療機関の崩壊を危惧している>
その上で、対策案のひとつはとして、東京都などが設置を進めているPCRセンターがインフルエンザの検査も同時に行う体制づくりを提案した。
<(PCRセンターで)インフルエンザと分かれば、そこで処方箋を出せるなどの体制ができれば、医療機関の負担も少し減るのかなと>
専門家の間でも議論が分かれている新型コロナの分類だが、コメンテーターのモーリー・ロバートソン氏は、見直しの議論が人々の警戒心の緩和につながってはならない、と念を押していた。
<素人が議論してても、コロナは大したことないという意見の人は5類でいいと言うし、いやいや(怖い)という人は2類でいいと言う。自分のオピニオンで現実が変わってしまうと錯覚が僕は怖い。僕も(コロナに関しては)素人なんですけど、謙虚な気持ちで、専門家の意見が分かれているということは、専門家も解明できないほど由々しい状態ということで、逆に気を引き締める心持が大事だと思います>