学生時代、勉学に必須だったシャープペンシル。100円クラスの安価な製品でも、日本製であれば安定した筆記が可能で、特段問題など起こらないものです。でも、使っているうちに、何だか「欲」みたいなものが起きてきませんでしたか。
もっとかっこいいシャープペンシルが欲しい。もっと機能性に優れたシャープペンシルが欲しい。友達が持っていない、ちょっと自慢できるシャープペンシルが欲しい。
わたしはそういう青春時代を過ごしてきました。安価な製品からだんだんとステップアップし、最後に辿り着いたのは──製図用シャープペンシルでした。
2020年の今となっては、プロが手書きで製図作業を行うことは稀でしょう。製図板を用意し、一からケント紙に製図用シャープペンシルで製図を行うのは、もう授業でしか行われていないのかもしれません。
それでも、やっぱりシャープペンシル好きにとっては「製図用シャープペンシルはシャープペンシル界の頂点のひとつ」であり、いつかは手にしてみたい憧れの製品なのです。
手書きによる製図という作業は激減したかもしれませんが、製図用シャープペンシルはなくなっていません。それどころか若いファンが増え、製図するか否かにかかわらず各社の製図用シャープペンシルは売れ筋となっています。価格に見合うしっかりとした作り、重量感あふれるボディ、長いスリーブによる筆記時の視認性、プロっぽい外見などが、彼らの所有欲をそそるのでしょう。
そんな製図用シャープペンシル界に、新星が誕生しました。それが今回ご紹介する、ラダイトの「テックドロー」シャープペンシルです。
ラダイトは筆記具メーカーではありません。広島県福山市に本社を持つ、文房具と雑貨の企画販売会社です。フォーマットの異なるノートを複数冊ビニールカバーで持ち歩いて使用するファンクションノートやバリエーション豊かなペンケース、革小物などを中心に特に若い層に人気のあるメーカーです。
そのラダイトが、まったく畑違いでありながらも、彼らの理想のシャープペンシルを発売したのです。
芯径は0.3ミリと0.5ミリの2種類。アルミでできたボディは0.3ミリが黒塗装、0.5ミリが無塗装銀で、カラーバリエーションはありません。口金、グリップ、クリップ、ノックパーツは共通の無塗装銀です。
口金は視認性を保つため、ステップヘッドと呼ばれる階段状の絞り加工が施されています。また芯を保護するロングスリーブは4ミリの長さを持っており、筆記される先の先まではっきりと見取ることができます。このスリーブには保護機能がないので、使用後や持ち運びの時は落下などさせないよう注意が必要です。
口金を外して見れば、金属チャックがしっかりと芯を保持している様を伺うことができます。精密加工されたチャックはユーザーに安心感を与えるでしょう。
テックドローの最大の特徴は、その径の細さです。軸径7.4ミリは一般的な鉛筆とほぼ同等で、手帳用などの握りやすさを犠牲にして細軸にしているシャープペンシルを除けば、群を抜いて細い製品です。そのグリップには握っても痛くないローレット加工が施され、滑り止めとして最適なデザインになっています。
金属クリップは簡単に取り外すことができますので、筆記時に不要と判断される方は外してしまってもいいでしょう。わたしは転がり防止の観点から、つけたままで使用しています。
ノックパーツ内に、芯の硬度表示が内蔵されています。縦溝になっている部分がネジで、ここを緩めることで窓の中の硬度表示を回転させることができます。表示はBから4Hまでで、内蔵芯はHBです。わたしは日常シャープ芯は2Bを愛用しているのですが、本製品に限っては硬度表示の限界に従ってBを入れて使用しています。
ノックパーツを引っ張って外すと、消しゴムが出てきます。消しゴムの下部には、製図用シャープペンシルらしくクリーナーピンも実装されています。
重量バランスは先端に向けてややヘビー気味になっていますが、極端に先が重いということではなく、先端の移動や回転が苦にならない理想的なバランスだと感じます。
グリップが太い筆記具は長時間の筆記や筆圧の強い方に最適ですが、本製品は筆圧を極力掛けず、軽いタッチで細かな描画を行う方に向いているのではないでしょうか。実際、細かな線を描き込もうとしたとき、太いグリップの製品ではわたしの場合ペン先が思う場所に向かってくれないことがあります。テックドローはそういうことがなく、ペン先がぴたりと書きたい場所に向いてくれて、細かな描画でもストレスなくコントロールすることができました。
製図用シャープペンシル好きの方に向けて作られた、まったく新しい製図用シャープペンシル。興味のある方にはぜひ触って、使っていただきたい製品です。
(他故壁氏)