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人よりも高い感受性を持ち、敏感で繊細な人をHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)、そういった子どもをHSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)と呼ぶ。アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が2002年提唱したこの概念は、2015年心療内科医の明橋大二氏によって翻訳された『ひといちばい繊細な子』(1万年堂出版)の刊行によって日本でも多くの共感を得た。
新型コロナウィルスの感染拡大により不安がはびこる世の中で、傷ついているHSCの子たちは多いが、無理をさせればもっと傷つけてしまう。親ができることはHSCの持っている豊かな感性や人の気持ちを理解する優しさ、聡明さを大切にし、安心と自信を育てていくことだ、と明橋先生は言う。
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HSCは5人に1人。コロナ禍でひっそり苦しむ、生まれつき繊細な子どもたち
新型コロナウイルスの影響で、夏休みが短縮された小中高も多かった2020年。感染拡大だけでなく猛暑を避け、旅行や外出を控えた家族もあっただろう。…

明橋大二(あけはし・だいじ)
心療内科医、専門は精神病理学、児童思春期精神医療。京都大学医学部を卒業し、現在、真生会富山病院心療内科部長。長年スクールカウンセラーとしても務める。著書に『子育てハッピーアドバイス」シリーズなど多数。近日刊行予定の訳書は『ひといちばい敏感なあなたが人を愛するときーHSP気質と恋愛』(エレイン・ N・アーロン著/青春出版社)。
HSCの不安を取り除くために親ができること
コロナ禍で不安に苛まれ、新学期になっても学校に行けないというHSCの子は少なくない。そんな時、親はどのように見守ればいいのか。
「まずは日常のルーティンを崩さないことです。ふつうに朝起きて夜寝る、など、普段の生活リズムを守ること。そして親がなるべく一緒にいることです。
2011年の東日本大震災の時も、傷ついた子どもたちはたくさんいました。でもあの時はあまりに状況が大変で、大人たちはみな家の片付けや地域の瓦礫撤去作業などに駆り出されてしまいました。避難所でボランティアに遊んでもらってはいましたが、やっぱり子どもにとって安心できるのは親がそばにいてくれることなんですね。
実際、新型コロナウィルスのことが出てから、子どもが赤ちゃん返りしてお母さんから離れられなくなったとか、思春期でも親の布団に入ってきたとかいう話を聞きます。そういう時は、まずは受け入れてください。それくらい、その子にとって親といることが大切なんです」
一緒にいて不安やつらさを聞く。それでも時にはうまくいかず、親子ともにネガティブな気持ちになることもあるだろう。
「それでもいいんです。HSCは個性なので、腹をくくって気長に付き合っていくしかありません。親が自分を大切にしてくれることが伝われば、HSCの子はちゃんと理解し、それだけで不安が解消していきます。夏休み明け、学校に戻りにくい時も基本は同じ。『どうしたい?』と子どもに聞いてみてください。どうしても休みたいと言えば休む。口だけで言っている場合もあるので、しっかり子どもの気持ちを確認することが必要です。大抵、子どもは学校であった辛いことや不安を聞いてくれるだけでいい、と言うはずです」
スモールステップで安心と自信を育む
これはHSCに限ったことではないが、子どもたちが少しずつ足を踏み出すためには、子どもの安心と自信を育むことが大切だ。そのためには「自分で乗り越えた体験」が必要になってくると明橋先生は言う。
「ただ、HSCは完璧主義なところもありますから、100点なら100点満点を取れないと納得しないんですね(笑)。70点や80点じゃダメなんですね。だから、スモールステップを設定することが大切です。
何か目標があってそれを100点とすれば、そこに至るまでに、10個の行程を示す。10できたら褒める、20できたら褒めるというふうにすると、本人は段階があるたびに達成感が得られて、頑張っている自分を実感できます。失敗によるダメージも少なく、失敗したけど挽回できた、自分の力で達成できたという成功体験が増やせます」
また、HSCは直観力に優れていたり、物事の本質を理解したり、動植物の世話が上手だったり、芸術的な才能があったり、読解力や理解力、共感力が高かったりといいところはたくさんある。そうした良さを褒めることも大切だ。
ただ、家庭の中で親が褒めることももちろん必要だが、小学生になってくると学校内や友人関係の中で、「認められるかどうか」がとても大切になってくるのは、HSCの子も同じだろう。
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