菌ひとつで、若返りや不老不死!?
Hさん:これは一体……と怖いもの見たさで検索してみると、「菌のシェア会」とか「縄文菌」とかいうワードも出てきました。体験談では「菌がすごいから爆発した」とか、「飲んだらふわふわ」するとか、「酔ったみたいになる」「誰からもらうかが大事」とか書いてあって。ますます理解に苦しんでいます。
酔うのはおそらく、マンモス菌かその家の環境からかはわからないけど、「酵母の働きで糖がアルコールになった」のでは? それを他者に飲ませたりしたら、密造酒ですな(酒税法)。手作り食品愛好者のみなさま、どうぞお気をつけくださいませ(真っ当な愛好者はそんなこと、とっくにご存知でしょうけど)。
私が検索したなかでは「若返りや不老不死をもたらす強い力を持っているんだとか」と書かれたブログや、「ウイルス感染対策、集中力や免疫力などのUPに効くと言われているマンモスジュース」と謳い 、「ラッシー割り マンモスジュースハイを600円でお出しします」と宣伝している都内カレー屋もありました。またマンモス菌でパンを作り、屋外イベント的な場所で「マンモス揚げパン」を売ったなる報告も。みなさん、フリーダムぅ。
メーカーみずから警鐘を鳴らす
さて、こんな状況に対して激しいツッコミを入れているのは、私ではありません。「マンモス菌」のサプリを販売している株式会社日本バシラスF研究所が激オコなのです(いいぞ、もっとやれ)。
日本バシラスF研究所とは、HPによるとマンモス菌の研究者であるバラチコフ博士から、純粋なバラシスF(マンモス菌)を受け取ることができる日本で唯一の企業なんだとか。そこのHPに、こんな苦言がアップされていました。
「インターネット販売サイト『BASE』で、マンモスジュースという商品が販売されていました。ページを見てビックリ!我が社のバシラスエフを開封してカプセルを2錠ずつ勝手に袋に分けて販売しておられました」
これは、ひどい。これぞ、爆誕。偽母乳や妊娠米など、ネット上にはまあ次から次へとひどい商品が沸き出てくるものです。同社は釘を刺しつつ、このような「株わけ」されたものを手にしてしまった人たちを心配する、誠実で冷静で真っ当な声明文を出しています。以下大事なポイントを勝手に要約しました。
・細菌学上の知識のない人が培養のルールも知らずに経由させるのは大変危険。
・同じ状態の菌が受け継がれているなんてことは、まずない。何人もに譲り継がれている菌が、一人目のところでとっくに別の菌に変わっている、ということもめずらしくない。
・世の中は雑菌だらけ。健康や美容のためと信じて育てているヨーグルトが、実は何だかわからない雑菌で発酵した「ヨーグルト状のもの」を食べているだけかも知れない。
・そもそも種菌は、そう何度も使えないと思っておいたほうがいい。正しいタイミングで新しい種菌に変える必要がある。
※全文読みたい方は、「マンモスジュースなるもの」をどうぞ。
ちなみに同メーカーHPには、謎の健康食品によくある「愛用者の声」もありますが、「疲れにくくなった」「調子がいい」とか、曖昧にやんわり~ふんわり~の言及で、むしろ好感度大。これまで「子宮筋腫は自分で治した」だの「靴下重ね履きで念願の妊娠」だの、ろくでもないものを見過ぎていたので、節度を持った商売に癒しを感じてしまいます。とんだとばっちりを受け、大変お気の毒。
この世は微生物のコロニーのごとく多種多様ですが、トンデモ沼においては「節操・根拠・常識がない」という特性が株分けされていそうです。しかも栄養は「善意」。
ひょんなことで現世に引っ張り出され、トンデモ沼の住人たちに醸されまくっているマンモス菌。もしコミック『もやしもん』のように菌と会話することができたら「永久凍土に帰りたい!」とか叫んでいるんじゃなかろうか。
これを機に、ぜひもうひとつ野良発酵をご紹介したかったのですが、長くなりそうなのでまた次回に。
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