日本とスウェーデン、出産・育児を取り巻く社会ネットワークの違い

文=和久井香菜子
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監視と徹底サポートは表裏一体

――しかし、そういった支援センターがあっても、アクセスを拒む市民もいるでしょうし、途中で別れるカップル、音信不通になってしまう妊婦やパートナーなど様々なケースがありそうです。

高橋:途中で来なくなった場合、行政側が「なぜ来ないんですか?」「何か問題がありますか?」とコンタクトします。産まれてきた子どもは、悪い言い方をすれば全部社会に監視されている。良い言い方をすれば、徹底的にサポートしてもらえるんですね。

――父親がわからない、逃げてしまう、または母親が相手を拒絶するようになった場合などは?

高橋:父親は法的に必ず確定しなければなりません。それは親としての義務です。仮に「わかりません」「いません」となると、司法が介入してきます。

 そしてDNA検査です。「父親と思われる男性の名前を挙げなさい」と言われ、行政機関が一人一人にコンタクトをとります。そうなることがわかっているので、そもそも男性も逃げませんし、もし女性が「一人で育てたい」と思ったとしても、男性に認知を求めなければなりません。父親確定後に双方が合意すれば、男性は親権を放棄できます。

ーー「逃げた者勝ち」にならない制度なんですね。

高橋:そもそも基本的に事実婚でも、離婚したあとでも、子どもに対しては共同親権です。親権という言葉は親の権利になってしまうので、私は養育権と言っていますが。スウェーデンでは親に養育されるのは子どもの権利なんです。共同養育の場合は、子どもと同居していないほうの親がきちんと養育費を払わなければいけません。それを強制的に払わせる法律も1930年代からあります。

 もし養育費を払えなかったら、国が立て替える制度もあります。養育費に関しては長い歴史があるので、国民の自覚も強いです。もし相手を妊娠させてしまったら自分の身に何が起こるか、男性もよくわかっているんだと思いますよ。

 スウェーデンは、人々が人間らしく尊厳を持って健康に暮らせるような制度やサポートを編み目のように構築してきました。実に80年以上の時間をかけて作り上げてきたんですね。

ーーそれでは日本が同じようなネットワークを構築するのは、100年先になるでしょうか。

高橋:いいえ、日本に対して私はそこまで悲観的ではないんです。日本も少しずつですが変わっていますよね。スウェーデンは全くモデルがないところを切り開いてきました。

 例えば体罰禁止法を世界で初めて導入したのはスウェーデンです。親の体罰、「ペチン!」も一切ダメです。大人同士ではしませんよね、だから子どもにもしてはいけないんです。人として相手を敬うのは、親子関係でも同じです。

 スウェーデンで親の最大の義務は「子供を自立させること」とされています。法律に書いてあるわけじゃないですが、社会的に親が子どもに対して持つのは義務のみ、子どもが親に対して持つのは権利のみなんです。スウェーデンの社会は、そこがすごくクリアだと思いますね。

ーーなるほど。こうしたモデルケースが今はすでにあるのですから、日本が国民の利用しやすい支援ネットワークを構築・一元化することも、その気になれば難しいことではないはずですね。

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