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児童・生徒へのわいせつ行為等により懲戒免職等になる教員が年々増えていることから、教員職員免許法で定められている失効した教員免許の再取得の規制が強化される予定だということが、8月31日にわかった。具体的には教員免許の再取得まで現状では3年要するところを、5年に延長する案である。
萩生田光一文部科学大臣は、9月1日の会見で以下のように話した。
<担当局で色々なシミュレーションをしているのは事実でありますけれども、過日国会でも申し上げましたように、厳格化を速やかに進めていきたいというのが私の思いでございます(中略)児童生徒を守り育てる立場にある教師が、児童生徒に対してわいせつ行為を行うことなど断じてあってはならないことだと思っています>
しかし、このニュースに対しネット上では「再取得できること自体がおかしい」「5年に延長したら本当に子どもを守れるの? エビデンスはあるの?」といった批判や疑問が殺到。9月8日の『グッとラック!』(TBS系)でもこの問題を取り上げ、議論を展開した。
子どもにわいせつ行為をした教員の「職業選択の自由」
性犯罪前科2回以上の者の同型性犯罪前科の割合を調べた法務総合研究所の調査では、小児わいせつ型のうち84.6%に前科があり、子どもへの性暴力は繰り返されている。
番組は性犯罪者の再犯防止に取り組む筑波大学の原田隆之教授を取材。原田教授は再取得までの期間が3年から5年に変更されることについて、<5年にしたら再犯の確率が減るのかとか、それが安全なのかという根拠があるかどうかですよね>と指摘し、<犯罪を誘発するような場には近づかないということが一番の再犯を防止するための鉄則です。(わいせつ教員は)教育の場には戻らないというのが子どもにとっても本人にとっても一番安全な選択であると思います>と説明した。
では、なぜわいせつ行為をした教員の免許再取得を禁止にできないのか。スタジオでは髙橋知典弁護士が、憲法上保障されている権利の「職業選択の自由」および「社会復帰の機会」が理由だと解説。
しかし、コメンテーターとしてリモート出演する西村博之氏は<社会復帰って言いますけど、教師以外の仕事は世の中にいっぱいあるわけで、別に教師以外をやればいいわけじゃないですか>と反論。同じくコメンテーターの上地雄輔氏も<もちろん社会復帰の機会を絶やしちゃいけないと思うんですけど、教える側と教えられる側の権力も差がありますので>と指摘した。
立川志らく氏が<なぜまた教師として戻りたいの?>と疑問を投げかけると、髙橋弁護士は<統計をとっているわけじゃないので、彼らがなぜ戻りたいのかはわからないですが、性犯罪をしたいからって人ももしかしたらいるかもしれないです>と回答。
続けて、<(被害者側の話を聞くと)普段は熱心だったという評判を受けている先生はいるんです。性犯罪をしてしまっている、だけれどもそれ以外では人気のある先生で(中略)既に性犯罪をしてしまったという状況から聞く理由なので、それは正しいのかわかりませんけれども、やっぱり子どものために勉強を教えるのが純粋に好きなんですという方は多い>と説明すると、これにも西村氏は猛反発。
<人気だからとか熱心だから性犯罪をしても許されるっておかしいと思うんですよね。仮に3年とか5年とかで戻れるってなったら「じゃあやってもいい」ってなっちゃうので、一発アウト、永遠に教師になれませんっていうほうが抑止力が働くと思うんですけれど>と意見を述べた。
「熱心でいい先生」との評価を受けていたわいせつ教員が少なくないということは、小児性愛障害の加害者臨床を行っている斉藤章佳さんの著書『「小児性愛」という病—それは、愛ではない』(ブックマン社)でも指摘されている。
<教育の現場にいれば、彼らの多くはいい先生といわれます。教育熱心で、子どもたちからも慕われているからです。これは子どもに性加害をした者に共通していえることです。彼らは子どもから好かれるのです。(中略)それゆえ加害行為が発覚し事件化したとき、周囲は「まさかあの人が」と思うことになります。(p143)>
また番組では、警察の聞き取りへの不安や、周囲の目を気にし、被害届が出せないケースがあること、現状の仕組みでは過去に懲戒免職になったことまではわかっても、その理由の把握までは難しいことなども解説された。
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