コロナうつ・適応障害と向き合う。あなたは「新型コロナの影響でストレスフルだ」と認めていい

文=みたらし加奈
【この記事のキーワード】

——LGBTQ+、フェミニズム、家族・友人・同僚との人間関係etc.…悩める若者たちの心にSNSを通して寄り添う臨床心理士が伝えたい、こころの話。

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 9月になり、気温も落ち着き始めた。そろそろ秋の知らせか……と感じていると、ひとつのニュースが飛び込んできた。

8月の自殺者、大幅増加で1800人超 コロナ影響か分析へ」(NHK)

 警察庁によれば8月に全国で自殺した人は1849人で、去年の同じ時期に比べてその数は246人増えたというニュースだった。恐れていたことが起きている……と咄嗟に思った。

 新型コロナウイルスの蔓延により、“新しい生活様式”を望まれるようになってからすでに半年以上が経過している。私のもとにくる原稿の執筆依頼も「コロナ禍をどう乗り切るか」「コロナ禍でのメンタルヘルスはどうなるのか」といった類のものが多い。

 しかしながら、多くのメディアが警鐘を鳴らしてはいるものの、まだまだ一般的には「メンタルケアをしていくこと」への抵抗は強いと感じている。「コロナうつ」と言われても、一体どのような対策を取ればいいのか、また自分の状態が“それ”に当てはまるのかすら、わからない人は多いと思う。

「適応障害」と「うつ病」の大きな違い

 皆さんは「適応障害」という名前を聞いたことはあるだろうか? 適応障害とは、ストレス因によって引き起こされる気分の落ち込みや意欲低下、不眠や気怠さなどの身体の症状を伴うもので、ストレス性障害のひとつとされている。

 人によっては気分のムラが出たり、攻撃的になってしまう場合もある。診断基準では、ストレス因の始まりから3カ月以内で引き起こされ、ストレス因の終わりから6カ月以内に収束する。

 この「ストレス」に関しては特に定義があるわけではなく、例えば同じ出来事(ストレス因)が起こったとしても、それによって受ける影響は人それぞれ違う。また、すべての人が自分のストレスを意識的に把握しているわけではないので、適応障害になったあとで、「辿ってみたらこれがストレスだった」と理解できるケースも少なくない。

 また、適応障害とうつ病は混合されがちであるが、うつ病との大きな違いは、

・発症の原因が必ずあるということ
・気分が落ち込んでいたとしても、楽しいことがあれば楽しめる
・薬があまり効かない
・ストレス因がなくなれば回復していくこと 

と言われている。

 前述した「コロナうつ」についても、“うつ”とは言いつつ、適応障害の一部だという見解もある。

 そしてこの適応障害は、病状が悪化するとうつ病などほかの精神疾患に移行してしまう側面があり、私はこの辺りに大きな危機感を覚えている。

 例えば「職場」がストレス因となって適応障害になったとしても、退職や転職によって回復するケースがほとんどだ。しかしながら、「新型コロナウイルスによる影響」がストレス因になっている場合、その要因はいつ片付くのか分からない。だからこそ、最初は専門機関で「適応障害」としての対応を受けていたとしても、ストレス因が解決されるわけではないために重症化しやすいのだ。また、適応障害はうつ病ほどの認知度はなく、「楽しめる時は楽しめてしまう」ために見過ごされてしまうケースも多い。

 以下のチェックリストは、あなたの「病名」を決めるものではないが、もし少しでも当てはまる場合は、躊躇せずに専門機関を尋ねてみて欲しい。身体についての項目が多い場合は「心療内科」、こころについての項目が多い時は「精神科」、そして(どちらにも当てはまらなかったとしても)漠然とした不安がある人には「カウンセリング」をお勧めしている。

<身体>

・けだるさを感じる
・食欲がない、或いは食べ過ぎてしまう
・頭痛がするようになった
・胃腸の調子が悪い
・肩こりがひどい
・めまいがする
・眠れない、或いは寝過ぎてしまう

<こころ>

・憂鬱な気持ちが1週間以上続いている
・不安な気持ちが1週間以上続いている
・嫌なニュースばかりを見てしまう
・イライラしてしまうことが増えた
・攻撃的な気持ちになってしまう
・考えがまとまらず、集中できない
・何かを計画したり、継続することが難しくなった
・死んでしまいたいという気持ちになる時がある

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 私のもとにくるメッセージの中には、「これってストレスなんですか?」と疑問を投げかけるようなものも少なくはない。自分自身のストレスを「大したことじゃない」と過小評価し、耐えようとしてしまう、ということだ。

 ウイルスが世界的な流行になっている中で、「苦しいのは私だけじゃない」と自分のしんどさを軽視してしまう人、また「リモートになって楽になったはずだから……」とストレスサインを見逃してしまう人もいる。そうした無意識の重圧の中で、自分のメンタルヘルスに目を向けられないまま精神疾患を患ってしまったり、自死を選んでしまう人が今後も増えていく恐れは大いにある。

 だからこそ、専門家としてはっきり言わせてほしい。例えあなたにどういったバックグラウンドがあって、どんな生き方をしていたとしても、「コロナ禍」というのは大きなストレス要因のひとつである。

 自分と誰かのしんどさを比べなくていいし、あなたはあなたの「しんどさ」についてヘルプサインを出していい。こんな世の中を生きているだけで充分すごいことなので、たまには(できれば毎日のように)目一杯の「ご自愛」をして欲しいと感じている。誰かの“不幸”を推し量れないように、あなたの苦しみを“世の中の基準”に当てはめようとしなくてもいいのだ。

 例え専門機関で明確な診断が下されなかったとしても、あなた自身が「自分の心について真剣に捉えている」気持ちはいつまでも大切にしてほしいと思う。心の専門家は決して「こんなことで専門機関にくるなんて……」などとあなたを責めたりしない。だから違和感を感じることがあれば、気軽に病院やカウンセリングに足を運んでいいのだ。

 重要なのは。日頃からのメンタルケアの習慣と、自分自身のストレスや症状を意識的に把握しておくこと。私は発信を通じて、そのお手伝いができればと日々感じている。

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