「安易に緊急避妊薬を使う若い女性」の根拠はなに? 緊急避妊薬へのアクセスを阻む日本の問題

文=雪代すみれ
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緊急避妊薬を飲んでも「生理が来るまで不安だった」

——7月放送の『おはよう日本』(NHK)で、男性医師が「若い女性が安易に緊急避妊薬を使う」ことを危惧する発言をしネット上で批判が集まりました。染矢さんが今まで相談を受けてきた中で、そのようなことが心配になった経験はありますか。

染矢:「若い女性が安易に緊急避妊薬を使う」とは、何を根拠に言っているのか疑問に感じます。相談者の声を聞いていると、安易に「これさえ飲めばいい」というより、「本当に妊娠が不安で、100%ではないけれども、せめて妊娠の可能性が減る選択肢をとりたい」という切実な思いで入手される方が多いです。服用した後も生理が来るまで安心できず、不安な日々を過ごす子もたくさん見てきました。

 そして妊娠は、女性だけではなく、同じ数の男性もかかわっている問題です。性教育や正しい避妊の知識の普及は、緊急避妊薬の入手しやすい環境の整備と並行して進めていけるのではと思います。

——「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」での、「若い女性には知識がない」「若い女性が悪用するかも」などの発言も注目されていましたよね。

染矢:他にも「緊急避妊薬のオンライン診療ができるのは性被害者だけに絞ってはどうか」「緊急避妊薬の診察において、オンラインでの受診でも対面診療でも、精神的負担に大きな差はない」という趣旨の発言もありました。緊急避妊薬の処方には基本的に内診は必要とされていませんが、「プライベートな部分を見せなくてはいけないかもしれない」「自分の性経験について責められるかもしれない」という恐怖心を持ちながら直接産婦人科を受診するのと、オンラインでビデオ通話で話すのとでは、感じ方が異なると思うのですが……。

 私も検討会を傍聴したのですが、委員や参考人の方のほとんどが男性で、緊急避妊が必要になる女性の心情や背景を理解しているとは言い難いと感じました。なかなか緊急避妊薬のアクセス改善の議論が進んでこなかったのは、政策や意思決定の場でのジェンダーギャップが一因だと思います。

 検討会では転売に関する懸念も言及されていましたが、現在でも海外並行輸入品のサイトで売られていたり、フリマアプリでの転売で逮捕事例もありました。通販で購入した薬は、きちんとした薬なのか確かめようがないですし、万が一副作用が起きた場合の救済対象にもなりません。そもそも、海外との大きな価格差があり安心・安全に購入できる環境が整っていないから、裏の販売ルートが成立しているのではないでしょうか。

 また、「コンドームがあるのに薬で簡単に避妊できたら、若い人が性について軽い考えになるのでは」という批判もよく耳にします。そもそもコンドームは性感染症予防には有効であるものの、年間避妊失敗率は2~18%といわれており、誤った装着方法や破損によって避妊に失敗することがあります。また、性被害に遭うこともあるので、“軽い考え”でなくても、緊急避妊薬を必要としている人がいるんです。社会制度として、避妊や家族計画の権利を保障できるよう整備する必要があるにもかかわらず、個人の問題として、矮小化して捉えられていると感じます。

性の話のタブー感をなくすことが第一歩

染矢:一般の方から「緊急避妊薬の副作用が強い」「あまり飲むと不妊になるのではないか」と聞かれることが多いのですが、緊急避妊薬はWHOの必須医薬品リストにも入っている、安全性が認められている薬です。

 「ヤッペ法」という中用量ピルが緊急避妊として使われていた頃は、吐き気や嘔吐といった副作用がよく見られたのですが、2011年に緊急避妊の専用薬である「ノルレボ錠」が認可されました。ノルレボ錠では副作用が起こるのは稀で、起こったとしても一過性のものであると言われています。服用後に不妊になる副作用もありません。

——緊急避妊薬のアクセス改善のため、私たち一人ひとりに何ができるのでしょうか。

染矢:周囲との会話の中で、緊急避妊薬について話題にしてみるのはどうでしょうか。性や避妊に関わる話のタブー感はまだまだ強く、命や人生に関わる問題なのになかなか取り上げられてきませんでした。タブー感を打破のために、一言でもいいので「こういうことって大切だよね」と話してみてほしいです。また、SNSで声を上げていただくことで、アクセス改善のための議論が深まったり、多くの人がアクセス改善を望んでいることが、意思決定に関わる人に伝わればと思います。「#緊急避妊薬を薬局で」というハッシュタグをつけて皆さんの声をお聞かせください。

——“真面目に性の話をすること”のハードルを下げていきたいです。ありがとうございました。

「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」HP

「アフターピル(緊急避妊薬)を必要とするすべての女性に届けたい!」署名ページ

NPO法人ピルコンのHP
※メールもしくはLINEボットでの相談が可能

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