
Getty Imagesより
東京入管では、新型コロナウイルスの影響により、4月ごろから少しずつ解放される人が増えたが、いまだ200人近くの外国人が残されている。
この残された人たちは、難民であったり、日本に家族がいたりと、帰国できない事情がある人ばかりだ。それなのに、そういう人ほど長期にわたり収容されていて、なかなか解放されない。「自分たちは、もしかしたらもう永遠に出られないのだろうか」と、多くの被収容者が底知れぬ不安を抱えている。
東京入管では、被収容者に対する嫌がらせ行為の話が、一向に絶えることがない。女性への処遇は特に厳しい。
コロナの感染拡大を受けて、東京入管では被収容者にマスクが提供されている。しかし、男性被収容者は毎日もらえるのにも関わらず、女性被収容者は1週間に1枚しかマスクを提供してもらえない。
春ごろまでは3日に1枚ぐらいはもらえていたようだが、コロナが流行し始めてからマスク提供の頻度が減ってしまったという。いまは薬局に行けば簡単にマスクが手に入る。「マスク不足」といった言い訳は通用しない。
8月7日には、東京入管収容施設内でイラン人男性のコロナ感染が明らかになった。感染源は不明である。本人も「なぜ、かかってしまったのかわからない」と述べている。男性ブロックの職員と女性ブロックの職員は交流があり、職員などを通じてウイルスが広がる可能性は間違いなくある。この状況に危機感を感じた女性たちが職員にいくら頼んでも「洗って使って」と言われるそうだ。
問題はマスクだけではない。消毒液もあまり使わせてもらえないという。職員にお願いしても少量を手に落とすだけ。そんな生活に女性たちの不満は限界まで来ているが、逆らえば暴力などの報復を受ける可能性があるので、我慢を続けている。
感染者が出ているというのに、これではコロナ対策をしっかりできているとはとても言えそうもないが、窓口の総務課は「コロナ対策をしっかりやっている」の一手張りである。
もともと収容施設内の衛生環境には不満の声が出ていた。毛布やシーツは自分で洗濯機と乾燥機を使って洗うことができるが、マットレスは干す場所もないし、洗うこともできず、ずっと使い続けなければいけない。職員に取り換えてもらうように頼んでも当たりはずれがあり、結局、古くて汚れたマットレスが来たりすることもある。
このように不衛生な環境で、耐え難い生活を強いられているのに、さらにコロナの恐怖まで加わったのだ。
トランス女性の被収容者に対する差別的な対応
トランスジェンダー女性のフィリピン人・パトリックさんへの対応もあまりにも酷い。
パトリックさんがいる場所は一応、女性ブロックではあるが、男性からも女性からも遠ざけられ、個室に毎日22時間も閉じ込め続けている。フリータイムは他の被収容者とかぶらない時間帯に2時間だけしかもらえない。そんな生活が約1年も続き、拘禁症状に悩まされて、首を吊るなどの自殺を図る状況にまで追い込まれてしまった。彼女は自傷や自殺未遂を何度も繰り返している。
本来、パトリックさんのいる個室は、何らかの問題を起こした人を隔離したり、重い病気で職員が常に見張らなければいけない状態にあるときのために用意された部屋だ。しかし、パトリックさんはトランスジェンダーというだけで、何の問題も起こしていないのに、その部屋に閉じ込められている。
この部屋はトイレが廊下に向けてガラス張りになっていて、腰までのパーティションはあるが、使用中に女性職員や女性被収容者たちが通ることがある。職員がのぞき込んでくることもたびたびあるらしい。パトリックさんに対するこのような扱いに女性たちも「あまりに気の毒」だと、怒りを露わにしていた。パトリックさんも「犬じゃない、私だって人間よ」と憤りを見せている。
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