結婚や家族の常識が自分に合わなかったら、「オーダーメイドの家族」を作ればいい

文=原宿なつき
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『後ハッピーマニア』第1巻(安野モヨコ・祥伝社)

 昨夜、『後ハッピーマニア』第1巻(安野モヨコ・祥伝社)を読みました。1995年から連載されていた『ハッピー・マニア』では24歳だった主人公・カヨコが45歳に。「しびれるほどの恋がしたい!」と恋愛中毒全開だった彼女は、一途に自分を思い続けていたタカハシと結婚し、浮気の誘惑にも全力で抵抗し安定を掴んだ……かに見えましたが、ある日突然、タカハシから離婚を求められてしまうのです。

 しかも原因は、純情一途だったタカハシの心変わり。辛い。かつてカヨコの奮闘ぶりを陰ながら応援したいち読者としては、「カヨコを裏切るなんてタカハシ許すまじ」と憤りつつ、同時に、「でも、こういうことって現実によくあるよね」と思ったものです。

 「結婚=安定」「夫婦になる=恋愛や性交は夫婦間でしかしない」というのは結婚神話であり、現実ではないことは皆、知っています。離婚や婚外恋愛はありふれており、ありふれすぎているからこそ、「結婚とはこうあるべき」という神話が繰り返し語られているのです。

 望ましい「結婚」や「家族」については、「夫婦間でしか恋愛や性交をしない」以外にも様々な神話があります。「一対一で行うべき」「異性間でなければならない」「両親揃っている方が望ましい」とか。日本の場合、血縁を重視する人も多いため、「子どもと血が繋がっている方が望ましい」という神話も信じている人も少なくありません。

多様な家族の形を実践している人は、案外多い?

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佐々木ののか『愛と家族を探して』(亜紀書房)

 しかし、主流の「神話」にノレない、ノる必要がない人もいます。ライターの佐々木ののかさんが書いた『愛と家族を探して』(亜紀書房)では、まさにその「神話」にノらず、手探りで自分たちの心地良い「家族」を作り上げていった人たちの物語が紹介されています。

 佐々木さんが多様な家族の形を取材するひとつのきっかけは、ある女性との出会いでした。その女性は誰かと恋愛関係になることは望まず、しかし子どもを産み育てたいという気持ちはあったため、非婚出産を選択します。そして、「子育てに関わりたい」と言ってくれた人たちと、子育てを無理のない範囲でシェアすることで、「出たり入ったりしやすい家族」という形を実践していたのです。

 彼女が実践していたのは、「一対一で夫婦にならねばならない」とか、「好きな人との子どもを産まなければならない」とか、「家族は固定メンバーでかつ強力な契約がなければならない」といった神話とは無縁の家族の形でした。

 この本ではそのほかにも、「同性パートナーシップ制度を利用して、恋愛関係ではないけれど家族になることを検討している女性たち」「家族をつくるために精子バンクを利用したXジェンダーの当事者」「ひとりで子育ては難しいからと周囲の人たちに呼びかけ共同保育で息子を育てた女性」「1年ごとに更新、性的に独占しない、という契約している夫婦」など、自分たちの心地よい家族の形を模索し、実践している人たちの姿が紹介されていました。

 『愛と家族を探して』は、「恋愛して異性と結婚して、その相手としか性的関係を結んじゃいけなくて、その人と子どもを生み、夫婦で育てていくべき。死ぬまで一緒が望ましい」という現代の主流の夫婦・家族神話に違和感を感じている人たちに、「自分にふさわしい形を選んでいいんだ。選ぶことができるんだ」という勇気と、「実はすでにオーダメイドの家族や夫婦の形を実践している人はたくさんいる」という安心感を与える一冊だと思います。

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