キャバ嬢・風俗嬢を「労働者」と認めたくない? 「楽に稼げる」イメージと「風俗堕ち」言説がもたらす被害

文=原宿なつき
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GettyImagesより

 「キャバクラ嬢、風俗嬢は労働者か」「キャバクラや風俗で接客することは労働か」と問われたら、私は「それはそうでしょう」と返します。しかし一方で、キャバクラや風俗を「楽に稼げて、仕事しているように見えない」という人も少なくないようです。

 たとえばお笑い芸人の松本人志は、コロナ対策の給付金が話題に出た際、「水商売のホステスさんが仕事を休んだからといって、普段もらっている給料を我々の税金では払いたくない」と発言しました。

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キャバ嬢・風俗嬢を「労働者」と認めたくない? 「楽に稼げる」イメージと「風俗堕ち」言説がもたらす被害の画像2 ウェジー 2020.04.06

 松本の発言は、「水商売に従事している人を労働者とみなしていない」または、「水商売に従事している人は、楽をして高給を得ている(だから税金で補償する範囲を超える)」といった考えに基づいたものでしょう。

 往往にして、キャバクラなどでホステスから質の良いサービスを受けている人ほど、彼女たちが労働をしているという事実を忘れがちです。彼女たちは、「客がお金を払っている」から、「仕事として」笑ったり、話を聞いたり、愚痴を言ったり、親しげにふるまったりするわけですが、その仕事のスキルが高ければ高いほど、「自然体」に見えるため、働いている感が出ないのです。そのため、良質なサービスを受けている人ほど、「労働ではない。楽をして稼いでいる」と感じてしまうのでしょう。

 また、松本が「ホステスは高給取りばかり」と誤解したのは、高給なクラブやキャバクラなどにしか行かず、稼いでいる一部のキャバ嬢・ホステスしか知らないからかもしれませんが、それは多くのキャバ嬢・ホステスの実態とは乖離しています。

 労働組合キャバクラユニオンの立ち上げに携わった布施えりこは、著書『キャバ嬢なめんな: 夜の世界・暴力とハラスメントの現場』(現代書館)のなかで、「世間がイメージするキャバ嬢と、現実のキャバ嬢の労働環境や給与はかけ離れている」と指摘しています。

 いわく、「だいたいの場合、20万〜30万稼ぐのが大変、という商売」「メディアは少数派の高収入組をちやほやする傾向がある」「月80万以上稼いでいるなんて、歌舞伎のキャバ嬢でも1%以下」だとか。

 昼職のOLなどと比べると、一見、高給に見えるのは「時給の額面が高い」だけ。実態は、ボーナスもない、税金という名目で10%〜20%引かれる、保険や有給・退職金・雇用保険はない、客が少なければ当日に早上がりさせられる、遅刻やノルマなど罰金が多い、ヘアメイクのために一時間前から準備しても当然その分は自腹であり時給は発生しない……など、なかなかにシビアです。

 こういったシビアな現実は、当然「客」からは見えません。メディアで取り上げられるのも、稼げているごく一部のスター選手だけになるため、「楽に稼げる」「労働っぽくない」というイメージだけが広がっていくことになるわけです。

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