扶養の範囲に抑えたはずなのに…「○○の壁」の思わぬ罠

文=川部紀子
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  ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。共働き会社員(雇用者)世帯が、専業主婦世帯を上回ったのは、いまから23年前の1997年のこと。しかし現在も、「扶養の範囲」と呼ばれる制度は生き残っています。

 会社員の配偶者が収入・所得を一定範囲内に抑えることで、1万6千円を超える国民年金保険料は0円で満額納付している扱い(国民年金の第3号被保険者)になり、健康保険料を0円で持つ(健康保険の被扶養者)ことができます。

 また、夫の所得税と住民税は配偶者控除により下がり、自身は所得税も住民税がかからない範囲で働くことも可能です。会社によっては、扶養手当や配偶者手当などを別途支給しているところもあります。

 「扶養の範囲」は様々あり、それぞれ賛否はあるものの、働くことが難しい状況の場合はありがたい制度ですし、フルタイムで収入を得られない場合にはお得度が大きいのも現実です。

 今回は扶養の範囲で働く予定だったのにうっかり働き過ぎてしまった人の話を聞くことができたのでご紹介します。

いくつも存在する〇〇万円の壁

 会社員の夫と子ども1人の3人家族のA子さんは、一昨年の秋から、元々の技術と特技を生かしてフリーランスで働き始めました。

 個人の扶養の範囲に関連するものの締めは年末なのですが、一昨年の売上は、秋から年末までなのでそこまで多くありません。複数の扶養の範囲の壁を難なくクリアできました。

クリアできた複数の壁とはA子さんの場合、以下の通りでした。

①自分に「住民税がかからない」壁、約98万円(地域によりやや違いがある)
②夫の会社から「配偶者手当」(月にすると5万強)をもらう壁102万円
③夫が「配偶者控除」を受けられる壁・自分に「所得税がかからない」壁103万円(2020年から所得税がかからない壁は変わります)
④年金の第3号被保険者(国民年金保険料ゼロ)になれる壁・夫の健康保険の被扶養者(健康保険料ゼロ)になれる壁130万円

フリーランスの経費はどうなる?

 翌年は1月から12月までびっしり働くので、A子さんは夫に次の2点を会社に再度確認することをお願いしました。

・家族手当など諸々を、扶養の範囲内にするには月にいくらまで稼いでいいのか
・フリーランスの経費を差し引いて判断してくれるのか

 回答は、「月に85,000円まで」「経費を引いてくれる」とのことでした。月85,000円はつまり年間102万円です。

 そこで、A子さんは考えました。「102万円だと住民税の壁(先述①)に引っ掛かるので、経費を引いて100万円切るように働こう! これですべての壁をクリアできるので一番お得!」

 最終的に昨年1月から12月のA子さんの売上は約200万円でしたが、青色申告特別控除65万円と経費40万円を引いて所得約95万円となりました。95万円なら先述①から⑤の壁をすべてクリアということで、この春に確定申告を終えました。

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