「それをレイプだとは知らなかった」強姦の8割は、顔見知りによる犯行

文=原宿なつき
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ジェンダーロールと顔見知りによるレイプの関係

 実際にはレイプなのに、レイプだと認識していないのは被害者だけではありません。加害者も、「強引だったけれど、ちょっと暴力をふるったかもしれないけれど、同意の上のセックスであり、レイプではなかった」と思っています。

 なぜそのような考えに至るのか、その一因を本書では、ジェンダーロールに見出しています。

 ジェンダーロールとは「男らしさとは支配、女らしさとは服従という役割分担」です。「男性が性的にリードするべきであり、女性は性欲を隠して、セックスしたくてもNOと言うものである」「女性がNOと言っても強引に押し切るのが男らしさだ」という神話、あるいは“一般常識”は、性犯罪を見えにくくしているということです。

「なかったことにされがちな性犯罪」に目を向ける

 ところで、ここまでレイプの被害者として女性のみについて説明してきましたが、『Ms.』誌の調査では、被害者の1割は男性(ほとんどは男性から男性への加害)でした。男性の性被害は、軽視されがちです。

 2017年、ドキュメンタリー映画『童貞をプロディース』(監督:松江哲明)に、「童貞1号」として出演していた加賀賢三氏が、「劇中で、羽交い締めにされ、同意なしにAV女優に口淫される」という性行為の強要があったことを告発しました。

 松江氏は反論文を出し、加賀氏への謝罪を拒否。また、ドキュメンタリー監督の森達也氏はツイッターで、『「松江哲明が日本映画界にいる限り僕は攻撃をやめない。松江哲明を守る日本映画界が許せないから」との発言が事実ならば、映画監督からの引退を強要しているならば、もうこれ以上は看過できない』と松江氏を擁護しました。

 最終的には、松江氏が謝罪文を出すことになりましたが、「出演者の同意なしにAV女優に口淫させること」が性犯罪であるという認識が欠如していることは明らかでした。これをドキュメンタリー作品を撮るために必要な“演出”だとして正当化することは、被害者の尊厳を、また男性の性被害を軽視しています。

 もしこれが、「処女を強制的に脱がし、嫌がっているのに羽交い締めにして、陰部を舐める」なら、どうでしょうか? これが性犯罪ではないと言える人っているのでしょうか?

 顔見知りの性犯罪や男性に対する性犯罪は現実に起こっていることなのに、「知らない変質者に襲われる女性」の物語ばかりがイメージとして先行しています。顔見知りによる性犯罪や、男性に対する性犯罪が、「恋愛の一環」「冗談」または「芸術・仕事のために仕方ない犠牲」などと誤魔化され続ける限り、性犯罪の大半は「なかったこと」にされてしまう、というのもまた事実なのです。

(原宿なつき)

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