11月3日の大統領選まで1カ月を切った今、アメリカはトランプとホワイトハウス主要スタッフの新型コロナウイルス感染によって前代未聞の騒ぎとなっている。トランプの感染が発表された瞬間、誰もが「大統領に万一のことが起こった場合、どうなる取り決めなのか?」「大統領選はどうなるのか?」と2つの疑問を抱いた。そうした米国市民および世界の杞憂をよそに、トランプ自身は病身であるにもかかわらず、手の付けられない愚行を繰り返している。
タイムライン
10月1日(木):
大統領側近のホープ・ヒックスのコロナ陽性が伝えられる。ヒックスは9月29日の大統領選ディベートのためにトランプと大統領専用機エアフォースワンに同乗していたことから、トランプ感染の可能性が盛んに問われた。
10月3日(土):
午前1時前、トランプが自身と妻メラニアのコロナ陽性をツイート。
10月3日(土):
夕刻、トランプのみ専用ヘリコプターにてウォルターリード陸軍医療センターに向かい、入院。トランプよりも軽症と伝えられたメラニアはホワイトハウスに留まる。以後、様々な治療が施されるがホワイトハウスと医師からの発表に一貫性が無く、市民とメディアは大いに戸惑う。
10日4日(日):
夕刻、突如としてトランプが専用車に乗って病院を出る。メディアへの事前の告知はなく、「ホワイトハウスに帰還か?」とされたが、病院周辺に待機していた支持者に車内から手を振り、病院に戻った。
10月5日(月):
午後早くに「今日の午後6時半に退院する」と告知ツイート。夕刻に専用ヘリコプターにてホワイトハウスに帰還。
コロナSNS合戦
この間、一般市民、メディア、トランプ本人が入り乱れたSNS合戦となったことは言うまでもない。
1日にヒックスの陽性が伝えられた時点で、トランプの感染と死に関するジョークがSNSに溢れた。そのため米国ツイッター社は翌2日にトランプの名前は出さず、「誰に対しても」とした上で、死や深刻な病気を望むツイートをしてはならないとツイートしている。
3日の自身の陽性発表後、トランプはわずか数本のツイートしか行わず、「ツイート魔のトランプがツイートしないのは病状が深刻だからだ」との推測がなされる。その後、トランプは病院内で執務する写真をアップ。トランプが書類に署名する瞬間の写真だったが、SNSでは書類を拡大すると「白紙」だと指摘するものがあった。
5日の朝7時、トランプは猛烈な勢いでツイート17本を連投。全て大文字で「中絶反対!投票!」「宇宙軍!投票!」「株式市場値上がり。投票!」「法と秩序。投票!」など。その後も大げさかつ意味を為さない言動が続いており、「治療薬が気分を高揚させているのか」とする記事を多くのメディアが掲載している。
5日、ホワイトハウス帰還の直後、トランプは専用ヘリコプターでの帰還シーンを映画のごとく編集した映像をアップ。「三流映画のヒーロー気取り」などと揶揄された。ただし、この映像に含まれていないクロースアップでは非常に呼吸が荒く、完治していないことが見て取れる。
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) October 5, 2020
コロナ軽視を続けるトランプ
一連の騒ぎを通し、いくつかの激しいトランプ批判が持ち上がった。
・陽性でありながら不必要な「ジョイライド(楽しみのために車を乗り回すこと)」を行い、シークレットサーヴィス隊員に深刻な感染リスクを与えた。
・退院に際してもコロナ注意喚起のメッセージを発さず、逆に「コロナを恐れるな」とツイートし、マスクもホワイトハウス到着と同時に外した。
・完治前に退院したことによりホワイトハウス職員に深刻な感染のリスクを与えている。(トランプの入院中にハウスキーパー2名の陽性が伝えられている)
・税金を納めていない者が公費で最先端の高額治療を受けている。
(注)陽性発覚の直前に「トランプは750ドルしか納税していなかった」と報じられた。
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