トランプのコロナ感染をジョークに〜モラル vs. 米国民の本音

文=堂本かおる
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クラスターは「最高裁判事指名の会」から

 今回のホワイトハウス・クラスターの発生は、9月26日に行われた最高裁判事指名の会によるとされている。

 9月18日にルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が他界した。最高裁判事が欠員した場合、大統領が後任を指名し、公聴会を経ての任命となる。ただし2016年2

月、オバマ大統領の任期が「あと7カ月」の時点でスカリア判事が急死した際、共和党は「次の大統領が指名するべきだ」と強硬に主張し、オバマ大統領が指名した後任判事の公聴会を開かなかった。

 結局、その年の11月の選挙で当選したトランプが翌年1月の就任時にゴーサッチ判事を指名、審議、任命となった。その間、実に14カ月に亘って最高裁は欠員1名のままであった。

 今回は大統領選の「2カ月前」のことであり、民主党から「判事の指名は大統領選後とするべき」という声が当然のように出ている。しかしトランプは超保守派のバレット判事の公聴会を大統領選の前に済ませるべく、指名の会を26日に強行したのだった。

 当日、会は屋外(ホワイトハウスのローズガーデン)での開催としたものの、参加者150人はぎっしりと隙間なく並べられたイスに座り、そのほとんどがマスク未着用。会終了後は室内に移り、ハグと至近距離での会話を行なった。

 10月6日現在、陽性と報じられているのはトランプ、妻メラニア、ケイリー・マクナニー(ホワイトハウス報道官)、ホープ・ヒックス(大統領側近)、ビル・ステピエン(選対本部長)、ケリーアン・コンウェイ(元大統領顧問)、ロナ・マクダニエル(共和党全国委員長)を含む14名だ(※)。

※10月7日の時点でトランプ政権10名、その他13名となっている

トランプ感染ジョーク on TV

 トランプが入院した3日、ロックダウン以後は通常放映を行なっていなかったNBC『サタデー・ナイト・ライブ』が再開した。政治パロディが重要なネタであり、その時々の大統領のそっくりさんがコメディを繰り広げる番組だ。

 この日はトランプ(俳優アレック・ボールドウィン)とバイデン(俳優ジム・キャリー)による大統領選ディベートのパロディが番組の冒頭にあった。同番組は非常にリベラルな視点(民主党寄り、反共和党)のジョークで知られるが、視聴者の誰もがトランプの感染ネタはさすがに無いだろうと予想していた。

 予測を裏切り、バイデン役のジム・キャリーはトランプの感染を「科学とカルマ」によるものだと言った。トランプが気候変動やコロナ対策に関して「科学を信じていない」のは定説だ。加えて過去の数々の暴言暴挙への「カルマ」として感染したという意味だ。

 この日のゲストであったコメディアンのクリス・ロックも「トランプ大統領はコロナで入院中だ。オレはお気の毒ですと言いたい……コロナに対して」と言い放ち、観客の笑いを誘った。

 ニュース番組を模したコーナーでも「トランプを嫌っている多くの人が『回復をお祈りします』と言っているのはヘンです」「願っていたことが現実になったから罪悪感があるのでしょう」とやった。

 これらのジョークに「やり過ぎだ」という声も出た。もちろん番組側は熟考の上、批判を承知で放映に踏み切ったはずだ。自身が守る責任のある市民の命を全く顧みない、度し難い大統領。その感染をあえてジョークにすることに、社会風刺番組としての存在意義があるとしたのではないか。

 トランプが「中絶反対!投票!」「宇宙軍!投票!」など錯乱ツイートを連投した際、国民的ジャーナリストであるダン・ラザーがパロディ・ツイートを発してる。

「豆とコーンブレッド! 投票!」

 ラザーは70年に及ぶキャリアを持ち、ケネディ大統領暗殺からニクソン大統領ウォーターゲート事件まで数々の歴史的大事件を報道し、あまたの栄誉に輝くジャーナリストだ。アメリカ合衆国に於ける大統領の重要さを誰よりも知るであろう人物が、時の大統領を軽く笑い飛ばしたのである。
(堂本かおる)

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