性交痛、ゆるみ…女性が「自分のために」解消してほしい性の悩み

文=三浦ゆえ
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左:婦人科形成・奥村智子先生/右:産婦人科・宋美玄先生

 産婦人科医の宋美玄(ソン ミヒョン)さんと、婦人科形成の専門家・奥村智子さんの対談。後篇はそれぞれに寄せられる、セックスの悩みを中心にお届けします。

女性器のトラブル・悩みはどこに相談すればいい?「自然がいいから、そのまま」放置も

 多くの女性にとって女性器は、「自分の身体にあるのによく知らないところ」ではないでしょうか。子どものころに「さわっちゃいけません!」と大人からいわれ、で…

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性交痛、ゆるみ…女性が「自分のために」解消してほしい性の悩みの画像3 ウェジー 2020.10.15
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宋美玄
産婦人科専門医・医学博士・FMF認定超音波医 1976年 兵庫県神戸市生まれ。2018年に丸の内でレディースクリニックを開業し、思春期から性成熟期・更年期・老年期まで、女性のライフステージに合わせたチェックとケアを提供する。また、婦人科医の視点での社会問題の解決や、ヘルスリテラシーの向上にも取り組んでいる。 https://www.moricli.jp/

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奥村智子
日本美容外科学会専門医(JSAS) 美容外科医として11年のキャリアの中で、のべ5万例以上の症例を経験。大手美容外科では、その時点で10年を超える歴史に於いて初の女性院長となり、その後エリア統括院長も務めた。2020年にルクスクリニックを開業、女性特有の悩みに確かな技術と知識で応える。 https://lux-clinic.jp/

 

奥村:セックスの悩みとひと口にいっても多岐にわたりますが、そのなかには外科的な手術で解消できるものもあるというのは、もっと知られてほしいですね。処女膜切開のために来院される方はけっこういます。特に20代の方に多いです。

宋:性交痛といって、挿入時に痛みを感じる人は多いですが、その原因が処女膜にある場合のことですね。“膜”とはいいますが、実際には腟の入り口付近にある、穴の空いたヒダ状の粘膜のことで、初体験をする以前からスポーツなどが原因で裂けている人も少なくありません。初体験で裂けると痛いですが、その後はすり減って痛みも感じなくなるのが通常。でも、まれにそこがすごく硬くて裂けずに残ってしまう人がいて、セックスのたびに痛みを感じるんですよね。

奥村:どうしていつまで経っても痛いのか、痛いばかりでまったく気持ちよくないのか。個人でその原因を判断するのは、とてもむずかしいです。長い期間ずっと悩まれていて、ようやく処女膜切開のことを知ったという女性は多いです。なかには結婚後一度も性交渉が成立していない、という方もいますから。とはいえ誰にも相談したことがないかというとそうでもなくて、婦人科で相談して「マッサージして入口を伸ばしてみてね」「潤滑ジェルを使ってね」とアドバイスされてはいるんですよ。

宋:産婦人科医の意識が全体的に低すぎるっていうのは、私も感じますね。

奥村:「努力が足りない」的な根性論で終わらせちゃう医師が、特に男性に多いみたいです。でも悩んでいる女性って、努力もしているし、マッサージしたり潤滑ジェルを使ったりっていうのはすでに試みています。でもダメだった……と何度も何度も傷ついて、ようやくうちのクリニックにたどり着かれるんです。

宋:産婦人科といっても、性交痛や処女膜の問題についてたくさんの症例を診ている人は少ないですよ。専門医試験でも出てこないから気にかけたこともなく、「痛くて入らなくても、1回だけ我慢してください」なんてことを言っちゃう。なぜか夫のことを優先して「旦那さんのために我慢しましょう」という医師もいると聞きます。ひどい話です。

奥村:もちろん性交痛には原因がたくさんありますし、パートナーとの関係性の問題、メンタルの問題が影響していることも少なくないですが、一方で性器の器質的な問題を見落とされるのは残念ですね。ごく簡単な手術で、痛みから解放されるケースも多いのに。

宋:患者さんにとってのゴールは「挿入すること」じゃなくて、「パートナーとのセックスを楽しむこと」だと思うんですよね。子どもがほしいから性交痛をなんとかしたいという人もいて、これについてはいろんな意見があるとは思いますが、現代ではセックスをしなくても授かることができます。腟に物が入ったらOKではないですから、「我慢して受け入れましょう」というのは何の解決にもなっていませんよ。奥村さんのクリニックでは、「痛くてどうしてもペニスが入らない」という人のうち、手術で治りそうなのは何割ぐらいですか?

奥村:うちに来られるのは、ほぼ手術で治る方ばかりなんです。みなさん、ネットで検索したりして、自分には手術が必要だと確信されたうえで来院されるので。たとえば挿入されると腟が痙攣するなど、意識的な問題でセックスができないという方は、私はいままで診たことないですね。

宋:そうなんや! うちは逆に、腟に器質的な問題があって処女膜を手術で切れば直るタイプの方はたぶん1割もいないです。触診したら、「これは切らなくても、ちゃんと伸びるだろう」という方ばかりで。

奥村:伸びるだろうっていうのは、触れればわかりますよね。

宋:そういう女性には、「ダイレーター」といわれる、腟をちょっとずつ広げていく器具を毎日10分ぐらい挿入してもらって心理的なハードルを下げ、段階を踏んでパートナーとのセックスにチャレンジしてもらいます。あとは、痛いところを突かずにできる体位をアドバイスしたり。

奥村:セックスすることで何を得たいのか、ということも含めたコミュニケーションが、男女間で足りていないと思うことは多いですね。婦人科形成では処女膜にアプローチはできても、その先の指導はしないのですが……。

宋:相手から「入らないなら手術してもらえ」って言われてきた女性もいます。

奥村:うちでもいますよ。

宋:そういう人ほど診察してみると、器質的な問題は見当たらない。相手が順序立ててデリケートゾーンやクリトリスをていねいに刺激し、性的に興奮した状態になってからそ~っと挿入する、というように適切なステップを踏んでくれたら、この女性はこんなにセックスを怖いとないのでは、と思います。そうした努力もせず、「手術してもらってこい」はないですよ。

腟縮小手術でQOLが改善されるケースも

宋:逆に、腟のゆるみの問題で悩まれている方はクリニックにいらっしゃいますか?

奥村:多いですね、特に経産婦さんに。分娩時に、子宮や腟、膀胱を支える筋肉や腟壁が大きく引き延ばされてしまうからです。婦人科形成では、腟縮小の手術をご提案します。

宋:性的興奮がない状態で触診すると「ゆるいな」って感じます?

奥村:感じますよ。全体的に下がってきて腟の一部が腟口から出てしまい、こすれて痛いという方もいます。あとはお風呂に入ったときに腟に水が入るパターン。量が多いと日常的に困ってしまいます。

宋:腟に高周波をあてることでゆるみを解消したり、潤いを取り戻したり、つまり“若返り”できますと謳う施術もあるけど……。

奥村:ありますね、どこまで効果を期待できるか疑問ではありますが。それよりも、腟壁を腟の奥から切開して縫い寄せるほう確実だと思います。1時間もかからない、簡単な手術です。100%元通りになるわけではありませんが、悩みはだいぶ解消されますね。5年ぐらい経つとまたゆるんでくると感じられるようで、再度手術を希望される方もいます。

宋:それでQOLが改善されるだけでなく、セックスも楽しめるようになるかもしれない。

奥村:そうですね、腟のゆるみによってセックスのときに自身の感度がにぶくなったという理由で、手術を希望される方もいます。セックスが少し億劫だったけど、ゆるみが改善したことで前向きになれたという声もいただきました。

宋:手術をしたからといって、それだけでオーガズムに達しやすくというものではないけどね。

奥村:はい、それよりも積極的に楽しもうと思えたという点が大事だと思います。腟でのオーガズムにこだわる方もいますが、宋さんはどう思いますか?

宋:セックスについての悩みごとを募ると「中イキしたことがないんです」っていうのは断トツで多いですが、腟でのオーガズムこそが至高というのは、とても男性的な考え方のように思います。自分のペニスでイカせたっていう実感がほしい。これもAVの影響でしょうか。それよりも、女性には感度のいいクリトリスという器官があるのに。

奥村:クリトリスでいまひとつ感じられない……という人は、包皮がかぶったままという可能性もありますね。これも手術で除去できます。

宋:いいですね、クリトリスの環境を整えてあげるほうが性的充足度が高まりそうです。

Information

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