アメリカ大統領選はなぜここまで揉めるのか? 特殊な選挙制度と混乱の歴史

文=斎藤満
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Getty Imagesより

 英国の有名な詩人、バイロンはかつて「事実は小説より奇なり」と書きました。日本においてこの言葉は、NHKの司会者・高橋圭三氏がクイズ番組『私の秘密』で紹介して有名になりました。米国の大統領選挙はこの言葉にふさわしいもので、いったい何が起きるかわからない、小説よりも奇想天外なことが起こりうるイベントです。

 前回2016年の選挙では、事前予想は圧倒的にヒラリー・クリントン候補優勢と見られ、実際、得票数ではクリントン氏が多くを獲得したのですが、結果は逆となり、勝ったトランプ氏自身も驚きの表情を見せました。2000年の選挙でも民主党のゴア候補が得票では上回りましたが、ブッシュ氏の勝ちとなり、フロリダの票の数え直しが行われました。選挙から1カ月以上も結果が出ずに市場は混乱し、株価は下がりました。

 当時、フロリダでは「ブッシュ氏に不利な地域の投票箱が海に投げ捨てられた」とか「選挙権のない人にまで投票させた」「1人で2回も投票した」といった文明国アメリカではおよそ考えられないことまでささやかれました。

 19世紀にはフロリダなど3つの州で「両者が勝ち」の認定証を出したため混乱が生じ、連邦議会の判断に委ねられたことがあります。最後は特別委員会の決定で大統領就任期日の4日前にようやく勝者が決まりました。

 今年の米大統領選挙は、近年にない「奇なること」が起こる可能性があり、市場はすでに身構えています。

特異な大統領決定ルール

 米国の大統領決定プロセスにおいては、敗者が自らこれを認め、勝者に「おめでとう」と言って退いて初めて決着します。裏を返せば、仮にトランプ大統領が選挙で負けても、自らこれを認めず、ホワイトハウスに居座れば、バイデン政権にはスムーズに移行できません。

 実際、トランプ大統領は先月23日の記者会見で、「大統領選で敗北した場合、平和的な政権交代に応じるか」と問われた際、「何が起こるか見てみなければならない」と述べ、明言を避けました。それを受けてバイデン陣営は、選挙が法廷闘争に持ち込まれる状況に備え、法務チームを増強しました。そして民主党のヒラリー・クリントン氏は彼に「簡単に負けを認めるな」とアドバイスしています。

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