アメリカ大統領選はなぜここまで揉めるのか? 特殊な選挙制度と混乱の歴史

文=斎藤満
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 その混乱のもとになりそうなのが郵便投票です。今年はコロナの感染拡大で投票が難しい状況が予想されるため、事前に投票用紙を配布し、郵便での投票を積極的に活用しようとしています。これにトランプ大統領がかみつきました。世論調査ではバイデン候補に水をあけられているものの、岩盤支持層を持つトランプ陣営からすれば、投票率が低いほど自分が有利と考えています。彼の支持者は雨が降ろうとやりが降ろうと、何としてもでも投票に行くと考えられています。

 その点、郵便投票は結果的に黒人など反トランプ層も含めて投票率を上げてしまい、バイデン票を増やす可能性があります。それだけに、トランプ大統領はこれを「インチキ」「不正投票」と批判し、これに反対してきました。しかし、もう郵便投票は始まっています。

 直接投票ではトランプ氏の岩盤支持層が多く投票して、11月3日の段階ではトランプ氏が勝つ可能性があり、トランプ氏はここで勝利宣言をする可能性があります。そして後日、郵便投票や在外投票が出そろってバイデン氏の勝利となった場合、郵便投票の「不正」をチェックさせ、最終的に法廷闘争に持ち込む、と見られています。

 先にがんで亡くなったリベラル派のギンズバーグ最高裁判事の後任に、トランプ大統領は保守派のエイミー・バレット判事を指名。上院が承認すれば9人の判事構成は保守6、リベラル3となり、トランプ氏に有利な形となります。

 すでに郵送された投票用紙のなかには、何十万人分も手違いが指摘されています。これがトランプ氏の「無効」という主張を後押しし、また、再送手続きで郵便投票が遅れる可能性もあります。このため、郵便投票をめぐる混乱はより長期化する懸念があります。

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