決められた美の基準に縛られる必要はない ルッキズムから抜け出す方法とは

文=雪代すみれ
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GettyImagesより

 「もっと痩せたい」「身長が高ければよかったのに」「二重まぶたに生まれたかった」——自分の外見に何かしらコンプレックスを抱いたことがある人は多いだろう。

 8月21日、性の健康教育に取り組むNPO法人ピルコンは、「#ピルコンルーム なぜ自分の見た目が気に入らないんだろう?」と題したオンラインイベントを開催し、約50名が参加した。本記事ではその様子を一部レポートする。

私たちが影響を受けているのは“日本基準”の美

 あなたは鏡に映った自分を見てどう思うか——自分の身体に対して抱いている印象を「ボディイメージ」という。ボディイメージにはポジティブな側面もネガティブな側面もあり、ネガティブなものが「ボディコンプレックス」である。ボディイメージに影響を与える要因には個人的要因や環境的要因があり、具体的には年齢・ジェンダー・文化・社会的階層・ダイエット産業などさまざまだ。

 イベントの前にピルコンがとったアンケートでは、106人中9割以上が「自分の容姿や体型にコンプレックスを抱いたことがある」と回答。

 イベントではコンプレックスのきっかけとして、以下のような経験談があがった。

・親や親戚から容姿について揶揄された
・「あの子はかわいいよね」と比較された
・「身長が低い男性はモテない・身長の高い女性はかわいくない」と言われた
・教師から「痩せすぎで気持ち悪い」と言われた
・クラスで男子が女子の容姿に順位をつけていた
・「太った?」と聞いてくる
・ホクロについてからかわれた
・ファッション誌のモデルには二重の人しかいない
・ダイエットや脱毛に関する広告を見たとき

 広告からの影響について、株式会社ネオレアが全国の中学生~大学生1,300人を対象に行った調査では、「SNS広告を見て不愉快だと感じる」と回答した人が9割を超えた。不愉快と感じた広告の内容は、「ムダ毛は恋人に振られるから脱毛しよう」「貧乳は恋愛対象外だからサプリメントを飲もう」「肌荒れは友達に悪口を言われるから治療しよう」などネガティブな内容のもの。

 またファッション誌の影響について、ピルコンフェローの金ハリムさんから以下のように説明があった。

ハリムさん(以下、ハリム):女性ファッション誌にて「男性から見た理想の彼女」として適正体重を大きく下回る数字を表記したり、モデルのダイエットストーリーが数字と共に書かれたりします。そういったものから影響を受け、理想の体重という数字や、ダイエットを頑張っている女の子と自分を比較し、自分の体型に不満を感じ「痩せたい」という考えになっていくのではないでしょうか。

 また、ハリムさんは自身の海外での経験から、「日本人が指標としている美の基準は、あくまでも日本特有のものである」と感じたそう。

ハリム:日本では肌が白いのは良いこととされているけれども、海外では「もっと日焼けした方が健康的で素敵だよ」と言われたり、留学先のある欧州の国では、一重のアジア人が珍しくて魅力的とされてたり、美の基準は国や地域によって違うと感じました。違いがあるからこそ、日本特有の基準を変えていける可能性もあると考えています。

ありのままの私を大切にする「ボディポジティブ」になる訓練

 ボディイメージにはネガティブな側面だけでなく、ポジティブな側面もあり「ボディポジティブ」と呼ばれる。ボディポジティブとは、ありのままの自分の存在を愛すること。決して、痩せたり綺麗になったり頑張ったことへの対価として自分を愛するのではなく、どんな見た目や身体でも自分を肯定し、受け入れていく考え方である。日本でも最近、貝印株式会社の『ムダかどうかは、自分で決める。』の広告は、「ルッキズムからの解放」「勇気づけられた」など多くの賛同が集まった。

 ネガティブな要素に影響されないボディポジティブは素晴らしいが、現実はルッキズムの影響を受けずにいるのは難しい。そこで、ボディポジティブになるためのコツも紹介された。

ハリム:ネガティブな感情に対処していくには、これまで自分が抱いたネガティブなイメージを一度手放し、新たに学び直すセルフケアやセルフラブが大事で、長期的に継続していく必要があります。例えば、自分の身体や容姿に関してネガティブなことを自分で言ってしまったとき、なぜ自分のことが嫌いなのか、ネガティブな言葉はどこからやってくるのかを考えます。そうすると、例えば「あのとき人に言われたからだ」「あの広告に影響を受けているんだ」と気づけます。

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