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9月25日、東京都足立区の自民党区議・白石正輝氏が、足立区議会の一般質問で「レズビアンやゲイだって法律で守られているんだという話になれば、足立区は滅んでしまう」などと発言し、大炎上した。
白石氏の発言は次のようなものだった。
<性の多様化だとか、LGBTと言われて、性の自由は尊重しようと言う地方自治体があちこちに今、生まれつつある。私は人間の生き方ですから、本人の生き方に対して干渉しようとは思いません。LであろうとGであろうと、本人の生き方に干渉しようとは思いませんけれども、考えてください。こんなことはあり得ないことですけれども、日本人が全部L、日本人の男は全部G、次の世代生まれますか。一人も生まれないんですよ>
<次の世代を担う子どもたちが一人も生まれない。本当にこんなことでいいんだろうか>
<BとTについては、これは生まれつきのこともありますから、必ずしも、ここでいろんなことを言うべきことではないのかもしれません。でも、L・レズとG・ゲイについてだけはもしこれが足立区に完全に広がってしまったら、足立区みんないなくなっちゃうの。もう100年とか200年の先の話じゃない。私たちの子どもが一人も生まれないということですから>
<もう次の時代、30年後か40年後にいなくなっちゃう。そのことを考えたときに、性の多様性とか性を尊重する、そのことはわかります。そのことはわかりますけれども、これを学校教育の中で取り上げたときには、「普通の」結婚をして、「普通に」子どもを産んで、「普通に」子どもを育てることがいかに人間にとって大切なことであるか>
<いやLだってGだって法律で守られてるじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう>
白石氏はこの発言が問題視されてもなお、テレビ局の取材などに対し一貫して「自分はLGBTの人を差別はしない」「だがLGBTが広まれば足立区は滅ぶ」「普通の結婚、出産が素晴らしいのだと子どもたちに教えなければならない」と応じており、謝罪の意向はないとしていた。
だが10月15日、区議会に上記の発言を取り消す申出書を提出。以下の部分だけを残すとしている。
<性の多様性とか性を尊重する、そのことはわかります。そのことはわかりますけれども、これを学校教育の中で取り上げたときには、結婚をして、子どもを産んで、子どもを育てることがいかに人間にとって大切なことであるか>
今月6日には足立区の鹿浜昭議長と区議会自民党が厳重注意をしており、白石氏は20日の本会議でついに謝罪。だが、おそらく納得はしていないだろう。
“多様”なのだから、「足立区男性が全員G」という未来予想図は荒唐無稽にも程がある。また、性的マイノリティは流行のように「広まる」ものでもない。異性婚以外の婚姻を認めずマイノリティを法的に守らないことは明確な「差別」だ。
残念なことに、昨年も自民党の平沢勝栄衆院議員(現・環境相)が「この人(性的少数者)たちばかりになったら国はつぶれてしまう」と発言していた。また、自民党の杉田水脈衆院議員は繰り返し「LGBTに特権を与えることに反対だ」と叫び続けてきた政治家で、「新潮45」2018年8月号(新潮社)への寄稿で<LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がない>と述べた。
優生思想にもつながる「生産性」発言で杉田氏へは非常に大きな批判が集まったが、杉田氏はTwitterで、自民党内では上記の意見が肯定されていると明かしていた。
<自民党に入って良かったなぁと思うこと。『ネットで叩かれてるけど、大丈夫?』とか『間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ』とか『杉田さんはそのままでいいからね』とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること>(杉田氏のツイートより/現在は削除済み)
杉田氏は同じ原稿において、<『常識』や『普通』であることを見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していく>と危惧している。ここでも「普通」だ。人々が「普通」を逸脱すると「秩序」が失われるので困るというのである。「普通」の結婚、出産、子育てを大勢の若い世代がしてくれなければ、東京23区の一画も、国も滅ぶのだろう。
要するに、白石氏や平沢氏、そして杉田氏のような政治家にとっては、足立区や日本の未来こそが個々の市民の人権より重要なのである。これは、この国の政権の示す態度だ。個々の幸せのためではなく日本の未来のために望ましい行動をとってほしい、そうして国を繁栄させることこそが、個々の幸せに還元される……そういう理屈なのだ。
それを如実に表している漫画があった。厚生労働省が公開している「いっしょに検証!公的年金」というページ内の漫画で、公的年金について解説する内容だが、とりわけ第11話「世代間格差の正体〜若者って本当に損なの?」はすごい。
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