自民党が理解できていない「大学受験生に2万円の給付」の意義

文=畠山勝太
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GettyImagesより

 公明党が、「大学受験を控えた高校3年生や浪人生を対象に、大学入学共通テストの受験料に相当する2万円の給付を提言した」ことと、それに対して、萩生田文部科学大臣が、「その目的は何なのかということも含めて与党でよく相談をしてほしい」という返答をしたことが話題となっています。

 報道されている教育関係の政治家の反応や、メディアの反応を見ていると、ものの見事に何も分かっていないようで、かなり驚きます。

 米国は良くも悪くも、何か教育政策上でよく分からない事があると、実験してみたり、研究者が何らかの疑似的な実験足り得る出来事を見つけてきたりして、その効果を明らかにしてくれます。それは大学受験料の話も例外ではありません。たかが大学受験料と思うかもしれませんが、そこはされど大学受験料で、実は大学受験料の変更は大きな影響があることが分かっています。

 そこで今回は、大学入学共通テストの受験料を給付する目的が何なのかよく分からない、というよく分からない議論を理解するために、大学受験料に関する米国の議論を紹介しようと思います。

重大な選択が些細なことで左右される

 教育に限らず、様々な分野の研究が、情報が不確かな中での人々の意思決定が、僅かな手がかりや、比較的分かっている部分に大きく左右されてしまうことを明らかにしています。このような人々の意思決定の特徴は、大学受験に関しても当てはまります。

 ちょっと何言ってるか分からない、という読者の方には、ご自身が大学受験や就職活動をした時のことを思い出してみて欲しいと思います。実際に進学や就職をしてみて、良い方向にも悪い方向にも、受験や就活の時には分からなかったことは少なからずあったのではないでしょうか? つまり、進学や就職という意志決定を下すときに、進学先や就職先に関する全ての情報を把握していたわけではなかったはずです。これが、情報が不確かな中での意思決定です。

 そうした中であなたは進学先や就職先をどのようにして決めたでしょうか? 一生に大きな影響を与える進学先や就職先を選ぶという決断の重要性に対して、案外キャンパスがお洒落、福利厚生がしっかりしているといった今になって考えてみると些細な事が決め手となった人も少なからずいるのではないでしょうか。この些細な事が、意思決定を大きく左右する僅かな手がかりや比較的分かっている事を指します。

 これは何も進学や就活といった、私の研究対象となる領域の話だけではなく、例えば医療保険や生命保険といった保険の購入、車や家の購入など、様々なことに当てはまる話です。

 実際に、米国の大学生の進学行動にもこれは顕著に見られます。大学への進学は、諸々含めると1千万円以上もかかる非常に高額な選択である一方で、高卒と大卒の生涯収入の差も数千万円に及びます。このように、大学進学は非常に大きな金額が動く選択肢であるにもかかわらず、米国では、数十万円の奨学金の提供や、奨学金申請書の作成補助、大学入試における志望動機書の廃止、といった極めて些細なものが進学行動に少なからぬ影響を及ぼすことが分かってきています。

 日本でも、大学進学行動が持つ意味の大きさに比べて極めて些細な入試科目の変更といったものが、出願数に影響を及ぼしたりするので、似たような状況はきっと存在しているはずです。

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