「ストレス耐性がない」は悪いことじゃない。意図的に「休む」ための10のルール

文=みたらし加奈
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みたらし加奈さん

——LGBTQ+、フェミニズム、家族・友人・同僚との人間関係etc.…悩める若者たちの心にSNSを通して寄り添う臨床心理士が伝えたい、こころの話。

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 最近はじめたTikTokで、「こんな時は注意! ストレスサインかも」というコンテンツを発信したところ、投稿して1週間足らずで合計16万回再生(2020年10月現在)を超える反響があった。内容は、ストレスサインを「身体編」「こころ編」「行動編」と3つのパートにわけて説明をしたものだ。必要性を感じたからこそ作った動画ではあったものの、あまりに多くの方から反応をいただいたことに驚きを隠せなかった。それと同時に、年代問わず、多くの人たちが「ストレスサイン」を知りたがっているのだと痛感した。

 前回の記事では「コロナうつ」や「適応障害」について触れたが、病気の知識だけを得ても、実際に自分がその状況になった時に「対処の仕方」がわかる人は少ないだろう。記事の中で、<私のもとにくるメッセージの中では「これってストレスなんですか?」という疑問を投げかける人も少なくはない。そもそも「コロナ禍がストレスフルな状態である」と断言できる人はどれほどいるのだろうか。>と書いたが、ストレスは目に見える物体ではなく、人によってその基準も変わってくるため、「何を“ストレス”として捉えていいのか」すらわからない人もいる。実際に、TikTokの投稿には「その症状が出ているけれど、ストレスとの向き合い方がわからない…」というコメントが多く寄せられた。

 また、「ストレス」とひと言で言っても、大きな打撃となるようなものから、日々の中でじんわり感じるものなど、形態もさまざまである。だからこそ、血眼になって「ストレス因子」を見つけ出すよりも、「ストレスを受けている自分」に気付いてあげたほうが、ケアの第一歩につながりやすいのかもしれない。そのためにはまず、「自分にはどのくらいストレス耐性があって、どこから先がケアゾーンなのか」というマイルールを持っておいたほうがいい。

自分の“コップ”のキャパを知る

 先に触れた通り、ストレスの基準は人によって大きく異なる。例えば「洗い物が溜まっている」という状態をストレスとして捉える人もいれば、まったく気にならない人だっているだろう。上司に怒られたことをすぐに忘れてしまう人もいれば、何年も引きずってしまう人もいる。「ストレス」への耐性値は人によって違うものであり、それらはその人の気質(先天的なもの)や学習(後天的なもの)で決まっていくこともある。

 ただ、1つだけ留意しておきたいのが、「耐性がある/ない」に、“善悪”は関係ないということだ。どうしても「ストレス耐性がある」ことは長所として捉え、「ストレス耐性がない」ことは短所、悪いことだと捉えられがちだが、すると今度はなるべく我慢しようとして「ストレスサインに気付きにくくなってしまう」現象が起こってしまう。ここでは「ストレスの耐性値」を「コップ」として例えたいと思う。

 人はそれぞれ、さまざまな形や深さ、大きさのコップを持っている。そしてそのコップに注がれる「水」が、「ストレス」だ。では、日々、コップに水が溜まり続けているとイメージしてみよう。その水は、意図的に自分自身をケアしなければ、自然になくなることはない。コロナ禍によって、(何もしなかったとしても)コップに水が溜まってしまった人だっているだろう。私の場合は、自分のコップが大体600mlくらいだとすると、新型コロナウイルスへのストレスで常に200mlくらいは水が溜まってしまっているイメージである。本来なら600mlのキャパシティがあったものが、情勢によって400mlしか使えなくなってしまう……この事実に気づくだけで、“自分のために変えられる行動”は多いと思う。

 例えば、本来だったら「1週間に1日休めば平気」だったものが、400mlになったことで「1週間に3日は休みたい!」に変わるかもしれない。こんなご時世だからこそ、前は行かなかったカウンセリングなどに通い始めてもいいし、新しい「ご自愛」の方法を見つけ出しても良いのだ。「ストレスへの対処法」を知るためには、まず「自分のコップがどれくらいなのか」「現時点でどれくらい水が溜まっているのか」を理解することが、ファーストステップなのだと感じている。

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