薄っぺらい女優ヨイショは「女性の尊重」じゃない。セックスワーカーの権利や安全を守るということ

文=wezzy編集部
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 セックスワーカーには周辺でビジネスを営んでいる人たちからの、強い働きかけがつきものですよね。この本でも、そうした働きかけに対して澁谷さんがどんな感情をもちながら仕事をしてきたが丁寧に書かれています。

澁谷 将来AV業界に入ってくる女性が「こんなはずじゃなかったのに……」とならないよう、きれいごとばかりでなく、ネガティブなことも含めて業界のありのままを書いたつもりです。

 澁谷さんがAV女優としてデビューすることになる経緯が、まさにそうした「強い働きかけ」が発生した例だと思いました。

澁谷 そうですね。ここのエピソードは、人によっては「それって強要じゃん!」と捉えられてもおかしくないものだと思います。
 私はもともとAV女優になるためにプロダクションの面接を受けたわけではなく、「アダルトグッズモニター」の募集に応募したんです。
 それがなし崩しにAVメーカーの面接に行くことになり、それから単体女優としての契約が決まってさらに引くに引けなくなり、結果的にAV女優としてデビューすることになりました。

 澁谷さんはご自身のことを「被害者」として位置づけてはいないですけれど、「AV強要問題」が社会問題となったように、同じような経緯をたどって深い傷を負った女性もたくさんいます。
 澁谷さんは自分もそうした人たちの延長線上にいると認識しながら業界に関する分析をしているので、この本がこれからAV女優を目指す人たちにとってのロールモデルとして機能するなと思ったんです。

澁谷 私自身はその後AV女優として楽しく仕事をしてきましたし、AV業界に入ったことも後悔してないです。
 ただ、それでも、業界の“普通”が世間の“普通”とズレていることに疑問をもつ場面はたくさんありました。
 たとえば、事務所がバーベキューやらハロウィンパーティーやらを主催し、やたらとサークル活動みたいなことをしていたんです。これは女優のプライベートな部分に深く入り込んで家族や友人のような存在になることによって、仕事から逃げられなくするのが目的だと思います。まるで新興宗教のようと感じていました。
 こんなイベントにお金を使うぐらいなら、女優のギャラをもっとよくすればいいのに……と(笑)。

 うん、うん。

澁谷 他にも細かい部分を言い出したらキリがありません。
 契約書にサインする時、最後の備考欄に「がんばります!」みたいなコメントを書くよう求められます。これは製作者側が「出演強要」をしたわけではないと証明するための保険としてこうしたコメントを書かせているわけですけど、これも一種の強要ではないかと思ったり……。
 あと、撮影で避妊のためにピルを飲む際、本来であれば女優本人が産婦人科まで行って薬をもらって来なくてはいけませんけど、それを事務所の女性社員が代わりに病院まで行ってもらって来るとか、社会的におかしいことが、AV業界では“普通”のこととして行われていました。
 こうしたことが行われているのを「なにかおかしいぞ」とみんな内心思っているんですけど、「そういうものだから」と納得してしまって、疑問を口に出すことはありませんでした。
 だから、こうしたことをひとつひとつ文字にしていくことで「これはおかしなことなんだよ」と業界の内外に対して問題提起することは大事なことなのではないかと思ったんです。
 そうでないと、業界がアングラな状態にとどまってしまいますし、そこにとどまっている限り、セックスワーカーが持続化給付金の対象から外されるなどの職業差別を受けるような状況はずっと変わらないだろうと思うので。

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