要 セックスワーカーの立場や労働環境を変えるためには、女性の経営者、あるいは元セックスワーカーの経営者が増えたらいいなと思うんです。
AV業界でいうと、ここ最近、女性のAV監督がすごく増えましたよね。女性がつくった作品だから全部いいと言いたいわけではないけれど、彼女たちの作品には女性の性的な自主性を大事にしたフェミニズム的な作品があると感じているし、大好きな作品がいくつもあります。
澁谷 そうですね。女性監督は本当に増えてきました。男受けしない作風が災いしてあまり売れなかったなんて話を聞いたこともありますけど、「男がつくる男向けの作品」ではない、違った作風のAVをつくっていくのは大事なことだと思います。
あと、女性のAVファンも増えてきました。AVメーカーの「SILK LABO」がリリースしているようなイケメンAV男優に焦点を当てた作品のファンでなく、女優さんのことを憧れの対象として見るような同性ファンもいます。
要 製作側にも消費側にも女性が増えてきたということですね。
澁谷 あと、私が嬉しいなと思うのは、プロデューサーとか広報さんに女性が増えてきたことです。特に、広報さんって、イベントなどを行った際は女優に付きっきりになってお世話をしてくれる役なので、そこに女性がいると安心して仕事ができる。
それに、そうした広報の方々は「AVはファンタジー」ということを発信してくれるんです。
AVはあくまでエンターテインメントであって、作品でやっていることを現実世界で真似したりすれば女性は嫌な思いをしますし、最悪の場合、怪我を負わせたり、犯罪になったりする。ただ、女優の側はそれを言うと「夢を守れよ!」といったバッシングが飛んできたりするので、なかなか言いにくい。
そういった状況下にあって、女性の広報さんが「AVはファンタジー」ということを発信してくれることは、ファンとの温度差を埋めてくれているという点で、本当にありがたいんです。
要 それは素晴らしい。
澁谷 職場があまりにも男性ばかりだと、その環境で女性に降り掛かるハラスメントなどの問題はなかなか解決に向かいにくいと思います。
AVの撮影現場では女優が主役なので、スタッフはお姫様扱いをしてくれるんですけど、それはただ単に「崇めておけばいい」といったうすっぺらい感じの“よいしょ”で、本当に女性のことを理解して尊重しようというものではなかったと思います。
要 だから、セックスワークにこそ女性のマネージメント層が必要だし、フェミニズムの考えが要ると、私は思うんです。
ただ、現在のように職業差別がはびこっている状況では、なかなか難しい。だからこそ、この本がやったみたいに、セックスワーカーたちを啓蒙したりエンパワーメントする動きがもっと起きてほしいと願っています。
(取材、構成:編集部)