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コロナ危機以降、中心部にほど近いエリアの狭小戸建て住宅を購入する消費者が増えている。背景となっているのは、マンション価格の異常な高騰、テレワークの普及、そして定年の延長である。今、直面している課題を考えた時、狭小戸建て住宅は有力な選択肢となり得るが、当然のことながらデメリットもある。
土地を2分割、3分割して販売
狭小戸建て住宅は、15坪(約50平方メートル)程度の狭い敷地に建てられた戸建て住宅のことを指す。狭い敷地を有効活用し、2階あるいは3階建てにすることで、床面積を稼ぐ物件が多い。
昔から、小さくても一等地に一軒家が欲しいというニーズは一定数存在しており、かつての狭小戸建て住宅は、こうした消費者向けに提供されてきた。だが、今、ブームとなっている狭小戸建て住宅は少々、趣が異なる。
現在のブームでは、都市の中心部からできるだけ近いところに住宅を持ちたいと考える消費者が、中心部からほど近いエリアに供給される割安な物件を購入するパターンが多い。首都圏での具体例をあげれば、東京の世田谷区や杉並区、板橋区といったエリアである。
こうしたエリアはかつては典型的な住宅地であり、比較的、敷地面積の広い戸建て住宅がたくさん建っていた。本来ならこうした宅地はそのままの状態で転売されるはずだが、日本人の所得が大きく下がった結果、まとまった面積の戸建て住宅を購入する人が激減している。所有者が亡くなった段階で、子供はすでにマンションに暮らしており、土地と住宅を引き継がないことも多い。こうした土地はデベロッパーが買い取り、2分割、3分割した上で狭小住宅として再販売される。
都市部に近いエリアでの狭小住宅を得意とするオープンハウスの契約件数はコロナ以後、急激に伸びており、5月は前月比で43%、6月は52%増だった。このほか多くのデベロッパーがこうした物件の販売を強化している。では、なぜ今のタイミングで、狭小戸建て住宅を購入する消費者が増えているのだろうか。最大の理由はマンション価格の異常な高騰である。
不動産経済研究所の調査によると、首都圏における新築マンションの平均販売価格はすでに6000万円を突破している。20年前は約4000万円だったので、実に1.5倍の価格になっているのだ。マンション価格が上昇している理由は、世界経済の拡大による資材価格の高騰である。
世界経済は過去20年間で1.5倍から2倍に規模を拡大させており、それに合わせて賃金や物価も上昇したが、日本だけゼロ成長が続き、賃金はむしろ低下している。諸外国の人にとってはマンション価格が上がっても賃金もその分だけ上がっているので大きな変化はないが、日本人にとっては一方的に価格が上がる状況となっている。