定年後の再雇用で現場仕事の可能性も
エリート層以外は、定年後の生活についても不安がある。日本の公的年金は財政が悪化しており、近い将来、年金の支給額が現状との比較で2割から3割低下するのはほぼ確実である。公務員や超優良企業の社員でもなければ、定年後にリタイアして年金生活を送るというのはほぼ不可能に近い。
実際、政府もこうした状況に対処するため企業に対して70歳までの継続雇用を求めている。つまりほとんどの国民にとって、事実上の生涯労働が求められる時代となっているのだ。だが、いくら企業が70歳まで雇用してくれるといっても、60歳以降もまったく同じ条件というわけにはいかない。
大幅に年収が減る可能性もあり、場合によっては副業が余儀なくされる。一部の企業では人員が過剰となっており、グループ内に派遣会社を作り、そこに所属させた上で、別の企業に派遣するプランも検討されているという。同じ会社内であっても、テレワークの対象にならない現場勤務を命じられる可能性もあるだろう。高齢になってからの長距離通勤はかなりつらい。
こうしたことから、できるだけ近いエリアで家を持ちたいと考える人は多く、結果として狭小戸建て住宅を選択している。ではこうした物件を購入することにはデメリットはないのだろうか。
デメリットを理解した上での購入ならアリか?
狭小戸建て住宅の場合、隣家との距離が極めて近く、戸建て住宅であっても騒音などのトラブルに悩まされる可能性がある。この点についてはもともとマンションの購入を希望していた人であれば、織り込み済みかもしれないが、狭いエリアに住宅が密集することになるので、災害時のリスクは高くなると思った方がよい。
地震などで一部の家が倒壊して火災が発生すると、住宅密集地ではすぐに延焼する。自身の家が大丈夫でも、近隣で火災が発生すれば、被害を受けてしまう可能性がある。
自身が高齢化した時にも問題が多い。高齢で足腰が弱ってしまうと、2階、3階への移動が極めて難しくなる。特に3階建ての場合、3階は使い物にならないと考えた方がよいだろう。
当然だが物件の売却も難しくなる。自身が終の棲家として購入するのであれば問題ないが、中古物件として売却の可能性もあるという場合には注意が必要である。狭小戸建て住宅の場合、一般的な住宅のようには売却できないと考えた方がよい。
先ほど説明したようにマンション価格の高騰は構造的な要因であり、この先、大きく価格が下がる見込みは少ない。今後、金利が上昇するようなことがあれば、ローンの支払総額はさらに増えることになるだろう。狭小住宅にはデメリットも多いが、購入を希望する人は、これからも増えていくだろう。