元AV女優が明かす、ファンタジーに隠されたAV業界の実情

文=雪代すみれ
【この記事のキーワード】

出演の同意・性病検査・避妊…AV現場の実態

三浦:AV業界は出演強要問題を経て健全化してきているという話もありますが、どのように変わってきているのでしょうか。

澁谷:私がデビューした2014年頃は、色々なことで十分な説明が受けられないことも多かったですし、デビュー作も「台本を送るけど、台本読まない方が自然になるから読まないで」って言われていました。ですが、今は事前に「台本を読んで嫌なことがないか確かめて」と言われますし、契約書も当時はマネジメント会社との契約書しかありませんでしたが、今はどの作品でもメーカーとの契約書が必要です。

 一番大きく変わったと感じるのは性病検査ですね。昔は男優だけ検査表が必要でしたが、今は女優も性病検査が必要です。撮影内容によって「〇日以内の検査が必要」と決まっています。

三浦:出演者が性感染症にかかったら撮影は止まりますか。

澁谷:男優の場合は、違う男優になります。女優の場合は主役なのでバラシ(撮影の取り止め)になることもあると聞きますね。バラシになった場合も、昔は「病気になった女優自身に責任がある」と女優に費用請求をしていた頃もありましたが、今は女優に負担をさせるのはNGになっていて、マネジメント会社とメーカーで協議していると思います。

三浦:性感染症にかかりたくてかかっているわけでもないですしね……。

澁谷:女優もほかの現場でうつされている可能性が高いですからね。新型コロナに関しても、男優はフリーなので誰がかかったかすぐ広まるんですけど、女優はマネジメント会社から守られているので、わかっても事務所までなんです。AV業界は男優のほうが「好きでやっているんでしょ」という雰囲気が強く、不利な立場なことが多いと感じます。女優はセックスはしたくないけど、有名になりたかったりお金が欲しかったり、やむを得ずやっている人もいますが、男優は行為自体を楽しんでいる人が多い印象です。

三浦:撮影中、避妊はきちんとされているのでしょうか。

澁谷:コンドームをつけているか、という意味でしたらコンドームはつけています。でもコンドームは避妊の失敗率も低くないですし、挿入の直前までつけないので、100%正しい使い方をしているわけではありません。そもそも契約書に「避妊は自分でしてください」って書いてあるんです。私自身は真正中出しの撮影まで低用量ピルを飲んではいませんでした。低用量ピルだって正しく飲まなければ避妊に失敗することもありますし、絶対ではありませんよね。私自身は撮影現場で妊娠したという話を聞いたことはないですが、撮影現場での避妊が万全であったかは疑問ですし、今後改善されていくといいなと思っています。

「AV女優はプライベートでもエッチが大好き」という幻想

三浦:『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』では、AV女優ゆえに経験するセクハラについても書かれていましたよね。

澁谷:私自身は業界内より、一般男性の方が露骨なセクハラをしてくると感じました。まず、ツイッターやインスタグラムのDMで下半身の写真がよく送られてきました。最近は現役のAV女優でも「下半身の写真を送るのやめてください」と注意する人もいますが、私は無視して通報してました。SNSは営業的側面もあるので、怒っているところを見せるのも人としての印象が良くないかなと思ったり、エッチが大好きなイメージを壊したくなくて……。

三浦:男性の、「局部だけの写真を送りたい心理」を、澁谷さんはどのように捉えていますか。

澁谷:全身写真やプロフィールを添えるのではなく、「なぜ局部だけ⁉」って思います。局部だけじゃなければいいって意味ではないんですけど、疑問ですね。AV女優が素で「おちんちんが大好きな人間」だと思い込んでいる人もいるんだろうなと。

 私はお酒を飲まないのでめったに飲み会には行かないのですが、仕事の付き合いだと思って行った飲み会で、「なんでAV始めたの?」とか「中出しって本当にしてるの?」とかずっとインタビューみたいに質問されたり、胸やお尻を「触っていいですか?」って聞いてくる人がいたり、許可なく触ってきたり……。エッチな会話ができる無料キャバ嬢扱いされてるなって思ったこともあります。

 他にも仕事外の飲み会で、40代男性に「スパンキングや3Pって本当に気持ちいいの?」って聞かれたことがあって……「その年齢なら人それぞれ好みがあるってわかるのでは?」と思い、「相手の同意をとって相手の好みを確かめた方がいいですよ」と答えたこともあります。そういう飲み会は「タダでご飯が食べられるよ」って感じで誘われるんですけど、お給料が出るならまだいいものの、食事代だけで仕事のような対応が求められるなら、自腹でご飯買って、家で好きなアニメを見ていたいなって思ってました。

三浦:一般企業でもその場の華として女性社員が飲み会に呼ばれることはありますが、いまのお話で、それが相手がAV女優となるとさらにあからさまになるような印象を受けました。「AVはファンタジーです」と言うと「そんなのわかってるよ」って返す人は多いですが、AV女優が生身の人間ってことをわかっていない人は少なくないかもしれないですね。

澁谷:レイプものや痴漢ものが演技ってことはわかってても、「AV女優は自分の性の欲望を全て受け止めてくれるエッチな存在」というファンタジーは信じちゃってるんですよね。

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