アメリカは今、一触即発のビリビリとした空気に包まれている。大統領選まで、あと2週間なのだ(10月20日現在)。しかも全米各州で新型コロナウイルス感染者の数が増えに増え、4月、7月に次ぐ第3の波が到来している(感染者830万人、死亡者22万人)。
コロナに感染し、入院したドナルド・トランプ大統領は10月5日に退院。当日はホワイトハウスに到着するなりバルコニーに現れてマスクを取り外して意気軒昂なところを見せたが、実は呼吸が苦しそうなシーンも撮影されていた。
その後しばらくは他州での選挙集会を休んだものの、12日から連日、フロリダ州、アリゾナ州、ウィスコンシン州など激戦州に赴いては大人数の集会を開いている。相変わらずマスクは着けない。支持者も壇上のトランプの背後、カメラに写る位置にいる者たちは「MAGA(Make America Great Again)」と大きく書かれたマスクを配られているようで着けているが、それ以外はほとんどが非マスク。6フィートのソーシャル・ディスタンシングも行わず、すし詰め状態だ。
トランプは壇上でコロナ禍を報じるメディアを罵倒。「コロナ、コロナ、パンデミック、コロナ、コロナと、あぁ、あぁ、CNNのマヌケなロクデナシども(damn bastards)」 一国のリーダーとは到底思えない言葉の数々だ。
トランプは敗れると過去の税金問題など数々の件で捜査を受け、訴追もあり得るとされている。投票日が近づくにつれ世論調査ではバイデンの支持率が上がっており、トランプは非常に焦っているように見える。
また、バイデンが勝ってもトランプはホワイトハウスに籠城して大統領の座を譲り渡さないのではないかという声もある。開票結果にクレームを付け、裁定を最高裁に持ち込む可能性もある。後述する超保守派のバレット判事を選挙日までに任命しておきたい理由である。
このように選挙の結果にかかわらず、何かしらの波乱が起こると一般市民も行政も覚悟している。各地で銃がかつてないほどに売れている。NY市警は選挙当日、投票所に警官を配備するが、警戒はおそらく年を超えて続けることになると予測している。
コロナ禍のリーダー、ファウチ博士に脅迫
トランプ政権コロナ対策チームの顔として、科学に基づく事実をひたすらに語り続けたのが、免疫学の専門家であるアンソニー・ファウチ博士だ。トランプが繰り返す非科学的な発言をものともせず、国民に事実を告げるファウチ博士に人気が集中すると、トランプはそれに嫉妬し、ファウチ博士のテレビ番組出演などを阻んだ。
そのファウチ博士と家族がコロナ否定派から繰り返し脅迫を受けており、連邦による警護が付けられていると公表した。米国でのコロナ流行初期、トランプはコロナの存在自体を否定し、続いて「すぐに無くなる」とした。その時点でトランプ支持者の多くは「コロナはフェイク」「マスクなど不要」となっており、全米にパンデミックを引き起こした。
全米各地で大暴れ「カレン」とは一体、何者?~白人女性の特権意識
ここ最近、アメリカのSNSには連日のように「カレン」が登場する。スーパーマーケットなどで怒り、怒鳴り、モノを投げ付けるなどする白人女性の映像がアップされ、…
ファウチ博士は妻とジョギングに出る際にも警備員に付き添われている。
一方、8月よりコロナ対策チームのメンバーとなっているスコット・アトラス博士は集団免疫論者であり、先日「マスクは役に立たない」とツイートした。ツイッター社はこれを「規則違反」として削除。ちなみにアトラス博士の専門は神経放射線学である。
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