非正規労働者を使い捨てる企業の「やりたい放題」、どう食い止めるか

文=wezzy編集部
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──メトロコマースと大阪医科薬科大学に関する最高裁判決では、どこが一番問題だと思われましたか?

今野 ふたつの裁判では、賞与・退職金を支給しないことが「不合理」がどうか判断するにあたって、「仕事の内容や責任の重さ」「異動などの人事の仕組み」「その他の事情」の3つの観点から考えています。
 そのなかで今回、最高裁は、賞与・退職金は「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る」ために支払われているという、いわゆる「有為人材論」から「不合理ではない」と判断しました。
 仕事内容や配置転換の状況は正規も非正規もほとんど違いがないのにも関わらず、配置転換の可能性を理由に一切の賞与・退職金の支払い義務がないとしたり、「有為人材論」のようなかたちで企業側の事情を大きく勘案するのであれば、企業は労働者に対してなんでもやりたい放題になってしまうと思います。

──この最高裁判決が今後の日本社会にどんな影響を及ぼすと考えられますか?

今野 2019年の高裁判決においては、メトロコマースの場合正社員の25%の退職金を、大阪医科薬科大学の場合は正社員の60%の賞与を出すとの判決が出ていました。
 これを受けて、正社員の何割かでも非正社員に賞与・退職金を支払う企業が増える流れが出来つつあったんです。
 しかし、最高裁ではそれを否定する結果が出ました。これを見て安心した経営者は多いと思いますよ。今後、非正規に賞与や退職金を出す企業は抑制される可能性が高いと思います。一度支給することに決めた企業も止めてしまうかもしれません。
 今回の最高裁判決はそのことにお墨付きを与えてしまったと言えます。格差是正に向けた社会的な取り組みを大きく後退させる判決だったと思います。

──非正社員の待遇改善は喫緊の課題だと思います。2020年2月に総務省統計局が出したデータによると、2019年の雇用者数5660万人のうち、非正規の職員・従業員は2165万人にもおよびます。
 正規雇用の労働者の数はこの10年間でほぼ横ばいですが、非正規の数は右肩上がり。こうした雇用状況が変わらないのであれば、正規・非正規の待遇を改めなくては格差がどんどん広がっていきます。
 この状況を変えるにはどうすればいいのでしょうか?

今野 今後に関してはふたつ方向性があると思います。まずひとつは、法律を変える。法律の中に「正社員に賞与・退職金制度を設ける場合には、非正規雇用に対しても、同じ計算方法で算出した額の最低50%は支給しなければならない」など具体的な数値を明記すれば、賞与や退職金が支払われないことは違法になります。なお、繰り返しになりますが、基本給に巨大な格差があるため、仮に水準が50%に設定されても実際の額はかなり少ない金額にしかなりません。
 ただ、「自助」を強調する自己責任論的な政策を推進しようとしている菅政権ではそのような法改正は望めないと個人的には思います。

──となると、どうすればよいのでしょうか?

今野 そこで大事になるのが、団体交渉です。団体交渉によって、非正社員にも賞与・退職金が出るという例を積み上げること。そうやって少しずつ社会の流れを変えていけば、将来同じような訴訟が出たときに裁判所の判断が変わってくる可能性もあります。

──地道な働きかけで状況は変えることができるし、まだ諦める必要はないというわけですね。

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