だが、沸き立ったのはネットメディアだけで、今のところ大手メディア(全国紙、テレビ局)はスルーを決め込んでいる。全国紙(朝日・読売・毎日・日経・産経)はいずれも五輪スポンサーになっており、新聞社とクロスオーナーシップで結ばれているテレビ局も、間接的に五輪翼賛側に属しているため、この話題を追いたくないのだ。
ではなぜ大手メディアはこの重要情報をスルーするのか。それは、報道機関なら、この話題を記事にするためには、少なくとも私に取材しなければならない。そうなると、情報の元が電通であると書かなければならないし、組織委の側に立ってこの情報を否定すると、もし本当に中止になった場合、取り返しがつかなくなる。五輪推進の立場なら真っ先にガセネタとして否定したいのだが、情報に信憑性がありすぎて否定できない。それを記事にしてしまうと、間接的に中止を匂わせるような内容になってしまうから、報道したくても出来ないのだ。
もちろん、全国紙が中立の立場だったら、そんな心配をする必要はない。ここへ来て、スポンサーになってしまっていることが、まともな報道が出来ない重い足かせになっているのだ。
ちなみに、過去の五輪で報道機関がスポンサーになった例はない。だから今回のように、一社どころか全国紙全紙がスポンサーになっているのは、極めて異常な状況なのだ。私はこの異常さを朝日新聞の論文サイト「論座」で発表したが、スポンサーである朝日新聞にこのような記事が載ったことはまったく無かった。よろしければ、こちらも読んでみて頂きたい。
https://webronza.asahi.com/national/articles/2020092400006.html
この記事を書いている10月26日の段階では、欧州のパンデミックはまったく収まる気配がない。あれほど威勢が良かったIOCの幹部連中も、もはや五輪開催についてまったく発言していない。この状況からすれば、やはり11月の訪日時にバッハ会長が菅首相に中止を伝達するのは間違いないと考えられる。
感染が深刻な国々を除いての開催もアリだという報道も散見されるが、全くのナンセンスだ。もともと五輪とは欧州貴族が始めたものであり、欧州主要国(ドイツ・フランス・イギリス・イタリア)などの国々が参加しない五輪など、IOCとしてはありえないからだ。
だが日本政府は、「WITHコロナ五輪」などという世迷い言をキャッチフレーズに、徹底した感染予防をすれば五輪が開催出来るようなプロパガンダを未だに展開している。しかし、そのためには莫大な追加予算と人的資源(医療従事者)の確保が必要であり、所詮、絵に描いた餅に過ぎない。
現に、東京都医師会の尾崎会長などは、酷暑対策に加えてコロナ対策のための追加措置は、病院のマンパワーを消耗させ、地域医療の崩壊に繋がると警告を発している。病院は五輪のために存在しているのではないのだ。