アメリカの手厚い失業給付金が批判されている理由「トランプは米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのか」

文=畠山勝太
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日本は25歳以上の大学入学者が少ない

 今日はまず、各国の大学と短大に入学する人達の中で25歳以上の人達の割合を示した図を見てもらおうと思います。

 なお二つの注意点があります。一つは軍隊と大学入学の関係です。徴兵制がある国々は、日本のような国と比べて、教育とキャリアの関係が複雑化しやすくなります。また、米国のように、徴兵制は無いものの、貧困層の子供にとって、軍隊に行って奨学金を得ることが大学へのアクセスを切り開く、という貧困と軍隊が少なからず関係している国々でも教育とキャリアの関係が複雑化しやすくなります。

 もう一つは、教育を受ける年齢が後ろ倒しになるような政策は望ましいものではないという点です。もちろん、いつ大学へ行くかは個人の自由ですし、人によっては働いてから大学に行った方がより多くの事を学べるのかもしれません。

 しかし、シノドス(高等教育の量的拡大はどのように行われるべきか)で紹介したように、働いてから大学に行っても、高校から直接大学に行っても、平均すれば人的資本(身につけている技術や知識のこと)の金銭的価値には差はありません。

 ただし年を取ってから大学に行けば行くほど、新たに学んだ知識やスキルを活かせる期間が減ってしまいます。このため、もちろん社会人になってから大学に入るのは個人の自由ですが、政府が大学に行く年齢を遅らせるような施策を推進するのは望ましいものではありません。

 以上を踏まえて、図1をご覧ください。

アメリカの手厚い失業給付金が批判されている理由「トランプは米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのか」の画像2

 図を見てもらうと分かるように、日本は先進諸国の中では極めて特殊な国で、大学を見ても、短大を見ても、ほとんどの入学者が10代で、25歳以上で大学や短大へ行く人がほぼいないという特徴を持っています。

 それに対して、多くの先進諸国では、大学入学者の10%から20%ぐらいは25歳以上となっています。そして、短大を見ると、実に多くの国々で大学以上に、25歳以上で入学してくる人の割合が高くなっています。

 先ほど言及したように、日本は軍隊と高等教育の関係が希薄なので、この割合が低くなりがちというのは確かにあります。また、新卒一括採用システム辺りが影響して、働いてから大学へ行くことが抑制されていることも考えられます。しかし、これらは大した問題ではありません。問題なのは、一度働いた人の「学び直し」がほとんど見られないことです。

アメリカでは手厚い失業給付金が批判されている

 今回はここから話を急旋回させて新型コロナ禍におけるアメリカの給付金についての話をしていきます。

 日本で10万円の給付金が行われたのと同様に、アメリカでも約12万円の給付金が支給されました。日本人留学生という立場ではどちらの対象にもならなかったのは恨めしい限りです。私のことはさておき、アメリカではこれに加えて、週当たり600ドル、月換算で約25万円の失業給付金も実施されています。

 一見すると世界的な危機の中で太っ腹な政策だと好意的な評価をくだせそうな政策ですが、実はトランプ大統領は米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのではないかという批判があるのですす。

 ここで再び冒頭の図に戻りたいと思います。先進諸国と比べたときに、日本では大学への社会人入学が少な過ぎることがたびたび問題になります。しかし「アメリカでは大学への社会人入学が多い」というのは錯覚で、アメリカでも、大学に25歳以上で入学してくる人は実は10人に1人以下とそれほど多くない上に、その中には少なくない退役軍人が入っているのです。つまり、アメリカでも軍隊以外で、働いてから大学へ進学するというのは、比較的珍しいことだと分かります。

 注目すべきは、短大です。米国では日本の短大に相当するものはコミュニティカレッジ(コミュカレ)と呼ばれています。しかし入学者の年齢分布を見れば、コミュカレが日本の短大と性質が大きく異なるものだということがかります。日本の短大に25歳以上で入学する人は100人に1人もいないのですが、米国のコミュカレの入学者の4人に1人以上は25歳以上となっているのです。

アメリカの手厚い失業給付金が批判されている理由「トランプは米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのか」の画像3

 同様のことは大学院(修士課程)についても当てはまります。日本では、修士課程の入学者に占める30歳以上の人の割合は10人に1人以下となっていますが、米国では3人に1人以上は30歳以上の人となっています。

 これは考えてみると当然ではあるのですが、社会人の学び直しとして学士課程の4年はかなり長い一方で(私も30歳を過ぎて博士課程に入り、今年で4年目になりますが、やはり長過ぎると実感しています)、修士課程の2年であればまだ何とかなります。

 この学び直しとしてのコミュカレ、大学院という存在こそ「トランプ大統領は米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのではないか」という批判を生んだのです。

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