オバマ政権から続くアメリカの失策
なぜコミュカレないしは大学院での2年間の学び直しの観点から、月25万円の失業給付金が問題視されたのでしょうか(詳しい議論は、ぜひハーバード大学のデミング教授が執筆したNew York Timesの記事に目を通してください)。
米国は不景気で発生した失業者がコミュカレで地域の状況に即したスキルや知識を学び直して、景気回復と共にまた労働へと戻っていくという伝統がありました。
しかし、①代々コミュカレへの公的支援が不十分であった、②トランプ大統領は明確に高等教育機関を敵視しており、新型コロナ禍でもコミュカレや大学への支援が極めて不十分であった、③失業給付金として月に25万円+一時金10万円を渡すことで、失業者の学ぶ意欲を損ねてしまった、という失策が積み重なった結果、一時期2500万人近くの失業者が発生したにもかかわらず、この秋のコミュカレの学生数は前年比で8%も減少してしまったのです。この値には留学生の減少も含まれるので、米国人に絞ったときのコミュカレの就学状況はもう少し良いものだと考えられますが。
新型コロナで発生した失業は、特に低スキル・低学歴層に偏重していました。このとき政府が採るべき対策は、失業給付金をもう少し削ってでもコミュカレに公的支援を行い、新型コロナで発生した低スキルの失業者をコミュカレに奨学金などで誘引し、新型コロナの影響が緩和された頃に元失業者達が労働市場に戻って来て、スキルアップした分だけ以前よりも高い賃金で雇用されて好景気&経済成長に貢献する……というものでしたが、そうはなりませんでした。
この手の失敗は、トランプ政権だけでなく、オバマ政権でも起こったもので、教育政策に関して言えば、アメリカは3期12年に渡って失策が続きました。民主党のバイデン候補の政策はオバマ前大統領のそれと近いものがあり、この失敗が継続する恐れもあります。バイデン候補の配偶者は、長年コミュカレの教員を務めてきた人なので、その経験を活かしたアドバイスがあれば、長年続いてきた問題が解消される可能性もありますが……大統領選の結果が楽しみです。
アメリカを反面教師に日本がすべきこと
このアメリカの新型コロナに関連する失業給付問題のドタバタから日本が反面教師的に学べることがあります。日本では現在、社会人の学び直し議論の主戦場は主に大学だという印象を受けますが、これを短大と修士課程にシフトさせるべきです。放棄所得の大きさや精神的なしんどさを考えると、4年はかなり長いです。さらに、第二次石油危機やバブル崩壊直後の景気後退時期を除けば、2年を超える景気後退局面は起こっていないので、2年程度の学び直し期間というのは理にかなっています。
日本でも求職者支援訓練と職業訓練がありますが、どちらも長くても半年程度のものが主力で、景気サイクルにもあっていないし、学位も出ません。であれば短大の活用をより考慮できるようにするのが良いのではないでしょうか?
また、以前の記事でも紹介しましたが、日本は社内研修が充実しているのかもしれませんが、それにしても大学院進学者が他の先進諸国と比べて極端に少ないので、この点からも社会人の学び直しとして修士課程の活用はより考慮されて良さそうです。
過去10年以上も米国は、不景気を活かして人々のスキルアップを図り好景気と経済成長をプッシュするという自国の強みを忘れていました。日本はこれを反面教師として、新型コロナのようなピンチもチャンスに変える思考で政策に取り組んでもらいたいものです。
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